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地球の科学と自然災害(12)<津波-その1>

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「地球の科学と自然災害シリーズ」として先月まで11回にわたり「地震」、「火山(噴火)」、「台風」、「竜巻」と調査・勉強してきました。今月からはシリーズの最終として「津波」を取り上げてみようと思います。地球科学的な関連性もあり、最初の「地震」の章の中で津波のお話をしても良かったのですが、2011年3月11日の「東北地方太平洋沖地震」による巨大津波の大災害により、あらためて津波発生のメカニズムを知ることや、より詳細な科学的な解析を行うことが、いつか将来再度日本列島を襲うであろう巨大津波に対する備えにもなるはずですので、敢えて「津波」の単独の章を設定しました。したがって、科学的な深い関連性がある「地震」の章と内容的に重複する部分があると思いますが、ご容赦いただきたいと存じます。

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[津波-1] 津波とは   *引用「地震と津波-メカニズムと備え」本の泉社

東北地方太平洋沖地震の際の巨大津波の映像が多数撮影されていて、テレビやインターネットなどで観ることができます。それを観ると、津波というものがどのようなものであるかがよく分かります。津波は「波」という字が入っていますが、波よりは流れに近いのです。中国では、古くは津波のことを「海溢(かいいつ)」と書いたとのことです。海水が堤防を越えて船を押し流しながら陸地に溢れる映像を見ると、もっともだと思う表現です。

津波とは、海水面が高くなり、陸地に流れ込む現象です。高さ3mの津波といったとき、通常の海の波の高さと同じように捉えてはならず、はるか沖までの海面が3m上昇すると考えなければなりません。なお、ヘリコプターからの映像で確かに「波」が写っているものもありますが、これが津波の本体ではないのです。

[津波-2]津波と波浪の違い   *引用「気象庁ホームページ」

海域で吹いている風によって生じる波浪は海面付近の現象で、波長(波の山から山、または谷から谷の長さ)は数メートル~数百メートル程度です。一方津波は、地震などにより海底地形が変形することで周辺の広い範囲にある海水全体が短時間に持ち上がったり下がったりし、それにより発生した海面のもり上がりまたは沈みこみによる波が周囲に広がって行く現象です。

津波の波長は数キロから数百キロメートルと非常に長く、これは海底から海面までのすべての海水が巨大な水の塊となって沿岸に押し寄せることを意味します。このため津波は勢いが衰えずに連続して押し寄せ、沿岸での津波の高さ以上の標高まで駆け上がります。しかも、浅い海岸付近に来ると波の高さが急激に高くなる特徴があります。また、津波が引く場合も強い力で長時間にわたり引き続けるため、破壊した家屋などの漂流物を一気に海中に引き込みます。

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[津波-3]津波発生のメカニズム   *引用「地震と津波-メカニズムと備え」本の泉社

津波が起こされる場所は、海水が持ち上がったり下がったりした場所です。その原因のほとんどは、海域で起きる地震、つまり断層運動です。その他にも、陸地から海への崩落、海底地滑り、海底火山、そして海への天体衝突などが原因になり得ますが、ここでは断層運動の場合について考えましょう。

断層運動が比較的浅いところで起きると、地表が上下に大きく変形して高さが変わります(次図)。この変化は、超巨大地震でも20~30秒ほどしかかからないので、その間に水が横に逃げることができず、海底の上下変動がそのまま海水面の上下変動として現れるのです(断層の拡大にかかる時間とは別です)。その上下の変動が元に戻ろうとして振動するのが原因となり、周りに波として広がります。

ただ波とはいっても、原因の断層が大きいので、海底で上下変動した場所の幅は少なくとも数10kmくらいになります。一方、海の水深は数kmよりも浅いのです。つまり波の幅(波長)が水深の10倍以上あることになります。水深が3mの池で幅数10mの盛り上がりに相当します。池に石を投げ込んだ場合の波紋とは性質が違ってくるのです。

海底の上下変動にともなって発生しますので、津波が最初に到着するとき、引き波で始まるか、押し波で始まるかは一定ではありません。海水が引いたら津波が来ると考えるべきですが、引かなくても津波は来るのです。海底が下がった場所から来る津波が一番早く来る場所では、最初は海水が引き始めるでしょう。しかし逆に、隆起した場所からの津波が最初に来る地域では、押し波つまり海面の上昇から始まります。そして、津波の半周期が過ぎたあたりで反対の動きに転じることになります。

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[津波-4]津波の伝わりかた   *引用「地震と津波-メカニズムと備え」本の泉社

津波が伝わる速度は、海の深さの平方根に比例します。水深が5000mの海では時速800kmで、水深が500mになると時速250kmに落ちます。さらに水深が50mとすれば時速80km程度とぐっと遅くなる。それでも車が高速で走る速さですからかなり早いのです。

通常の海の波とは性質が異なるとはいえ、波としての基本的性質は持っています。特に屈折や反射は同じです。波は伝わる時に、速度が異なる部分に入ると屈折します。原則は遅い方へ曲がることです。このことを津波に当てはめると、津波は常に水深の浅い方へ向きを変えることになります。この性質は、後でみるように海岸近くでの津波の高さに関係してくるので重要です。

一方、反射の性質も通常の波と同じであり、入ってきた角度と同じ角度で反射して出ていきます。

この屈折と反射の性質は、陸地を襲う津波の高さ以外にやっかいな問題をもたらしています。それは、大きな津波がなかなか収まらないということです。海岸にぶつかって反射した波は、いったん沖に向かいますが、波は海の浅い方に屈折を続けます。そのため津波は外洋に出ていかないで、また屈折して戻ってくることになります。これを繰り返すので津波は、海岸の周りに縛り付けられたようになります。そのため非常に長い間、津波が消えないということが起きるのです。またこうした津波の干渉もあるので、時間的に後の方にできた津波の方が高いということも頻繁に起きます。

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[津波-5]津波の高さ   *引用「地震と津波-メカニズムと備え」本の泉社

波の高さは通常、波源から遠ざかるにつれて低くなります。例えば、1点から波が同心円状に拡がると、その円周が長くなります。波のエネルギーがどの円周でも同じだとすると、円周が長いほど各部分のエネルギーが小さくなるので、波の振幅が小さくなります。振幅は波源からの距離の平方根に反比例して小さくなります。後で述べる屈折の影響と併せて、「波の幾何学的減衰」と呼びます。

なお、この減衰とは別に、波が伝わる間に波のエネルギーが海底との摩擦などでも少しずつ減りますが、この効果による津波の高さ変化は、津波被害を受ける程度の距離ではあまり大きくありません。

海岸に達した時の津波の高さは、いくつかの理由で増減します。その一つは、海岸に近づくと水深が浅くなり、津波の速度が遅くなることで発生します。津波の盛り上がりの先端が岸に近づくと減速します。

一方、後の部分は、はるか後で減速していません。その結果、高速道路で起きるような渋滞状態になります。高速道路の場合、車が上に重なることはありませんが、水の場合は可能です。その結果、津波が高くなるのです。この状態は水深と津波高の関係として表され、高さは水深の4乗根(平方根を2回求める)に反比例します。水深4000mのところで高さが1mだったとしても、岸の近くで水深40mの場所に来ると、高さは3m強になります。そしてこの津波が海岸(水深0m)に達したとき、水深=津波の高さと無理矢理考えると、計算上は海岸で5mほどになります。つまり、深い海で発生した津波は、海岸に来るだけで数倍の高さになってしまうのです。

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ここまでの話は、津波の屈折や反射を考えない場合です。光の場合の凸レンズのように、屈折により波が集中すると、当然、津波が高くなります。逆に凹レンズのようになれば、低くなります。津波の屈折は、水深の変化で起きることはすでに述べました。例えば、半島のように突き出た地形では、その前方に浅い海が広がっていることが多いのです。このようなところで、津波は海の浅い方へ曲がるという原則を考えると、津波は半島に向かって集中します(次図)。その結果、津波は高くなるのです。

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一方、中が広くなっているような湾では、入ってきた津波は周りに広がることになるので津波は低くなると期待されます。しかし実際には、湾の中の津波は単純ではありません。

例えば伊勢湾などのように、湾の大きさが津波の波長にくらべて大きいと、湾の中でも波の性質が現れます。基本的には、入ってきた津波は、周りの岸に向かって広がるように屈折しますが、岸で反射が起きます。反射した津波同士が合流することがあれば、そこでは高くなるのです。また、湾全体としての海の振動周期と津波の周期が一致すると、共振状態になり、大きな振幅になることもあります。

一方、津波の波長に比べて狭い湾の場合は、波の山の部分が到達すると、湾の内外の海面が持ち上がった状態になります。そして、海水が湾から陸へ流れ込みます。特に湾の奥が狭くなっている場合は、海水は、両岸から絞り込まれるように流れ込むので、奥での水位ははるかに高くなります。

地形特に海底地形の効果で現れる現象があります。それは、「段波」と呼ばれるものです。陸地に近づくと海底が浅くなるので、津波が高くなることはすでに述べました。前面の進み方に比べて後が早いので、水が前面の上に覆いかぶさるように追いついてきます。その結果、津波の最前面の前は普通の海ですが、そのすぐ後は段を作って盛り上がります。何度も述べているように、その後ははるか後まで海面は高いままです。いわば海に高い水の段差ができ、それが陸地に進んでくる現象です。

もう一つも、海底地形が浅くなることから起きるのですが、こちらは「分裂」と呼ばれます。これは、津波の上に重なるようにして短い波長の波がいくつも立ち上がる現象です。これが起きる理由は、少し複雑なのでここでは省略します。この分裂による波が、ヘリコプターから撮影された海の映像にみられた波だと思われます。この分裂した波は、津波本体ではなくその上に載った波ですが、高い波であることには違いなく、破壊力を持った部分になります。

以上、今月は「津波」の初回のお話といたしますが、来月も引き続き津波についての調査、報告をお届けします。

参考・引用資料>

「気象庁」ホームページ

「地震と津波-メカニズムと備え」 日本科学者会議編 本の泉社

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