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ネオジム磁石のすべて(22)<永久磁石の温度変化-5>

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過去数回に渡り、磁気性能に対する耐熱性に対してはネオジム磁石の形状(パーミアンス係数)や基本的な磁気特性である保磁力Hcj、Hcbが大きく関係してくることをお話してきました。しかし、最終的に永久磁石にするには着磁(磁化)という作業(工程)が必要ですが、着磁条件により磁気性能に対する耐熱性も大きく変わってきます。

 

<ネオジム磁石の着磁工程>

磁石を磁化するための着磁工程には、「着磁電源」と「着磁コイル」が必要です。量産の場合の着磁方法は通常「コンデンサーパルス着磁器」を使います。永久磁石を飽和まで磁化させることを「フル着磁」と言いますが、パルス着磁はある一定以上のパワーが必要となります。

この着磁エネルギーの概略は、E = (1/2)CV2(J)となり、パルス着磁器のパワーは印加する電圧とコンデンサーの容量によって決まります。電圧は、「パルスの高さ=印加磁場の強さ」、コンデンサー容量は「パルスの幅=磁場の印加時間」を左右します。

ネオジム磁石の量産工程での着磁電源には、一般的には電圧1500(V)、コンデンサー容量2000(μF) 以上が必要となります。この中でコンデンサー容量が少ないと、大きな磁石を着磁する場合や複数の磁石を同時に着磁する場合にフル着磁できず、性能が十分でなかったり、あとで減磁したりする不具合が起こります。

 

磁石のお話-画像310001

MAGNIX株式会社ホームページ引用

 

<パルス着磁の原理と特徴>

■原理

・ミニ磁石の整列:磁石になる前のNdFeB合金焼結体は、内部に磁区で分割された「分子磁石=ミニ磁石」が無秩序な向きで存在しています。

・磁界の生成:パルス着磁器は、コンデンサーに充電された電荷を瞬間的に放電することで、着磁コイルに大電流を流します。

・磁界の一方向への整列:この大電流によって、着磁コイル内に一瞬だけ一方向の非常に強い磁界が発生します。

・永久磁石の完成:この強い磁界を磁性体に印加することで、ミニ磁石がすべて同じ方向へ一斉に整列し、材料全体に磁力が発生して永久磁石になります。

■特徴

・高磁力と短時間処理:瞬間的に非常に強い磁界を発生させられるため、短時間で強力な磁石を作成することが可能です。

・超伝導バルクへの応用:超伝導体を冷やし、パルス磁場を当てることで磁場を捕捉させ、強力な永久磁石とする研究も行われています。

・薄型マグネットの着磁:薄型のシート状マグネットなど、表裏にN極とS極の磁極を作る着磁にも適しています。

■コンデンサーパルス着磁器の基本回路

まず交流電源を充電回路に通し、トランスで昇圧、整流回路で直流に変換し、コンデンサーに蓄電します。この蓄電されたエネルギーを放電回路に通電し、瞬間的に着磁コイルに通電します。この時コイルに大きなパルス電流が流れ、これが着磁に必要な高磁界を発生させます。

充電回路は放電回路に関係なく入力の電流、又はコンデンサーに満充電する時間を調整できますので、工場の設備規模はラインに合わせて自由に調整することが可能です。

 

磁石のお話-画像310002

MAGNIX株式会社ホームページ引用

 

<ネオジム磁石の着磁率と不可逆減磁>

ネオジム磁石は着磁が不十分だと初期の磁気特性値が低下するだけではなく、減磁曲線の角型性も低下する場合が多いため、温度が戻っても動作点の戻りが極端に悪くなり、熱による不可逆減磁が大きくなります。前項で述べましたように、ネオジム磁石の着磁は、通常、着磁コイルを使用した「コンデンサーパルス着磁器」を使います。磁石の材質、形状、着磁をする数量などによって「フル着磁」の電源パワーは異なってきます。次の図はNEO45SH材でパーミアンス係数2.0の磁石について着磁パワーを変化させながら、100%フル着磁した場合と75%、50%着磁の場合の着磁後の放置温度に対する不可逆減磁を比較したものです。

 

磁石のお話-画像310003

ネオジム磁石の着磁率と不可逆減磁率

 

当然ですが、飽和磁束密度まで着磁をしませんと磁化曲線はマイナーループとなり、Brの値もHcj、Hcbの値も低下します。それぞれのデータは着磁後の室温の初期値に対しての数値となります。ご覧のように、着磁が不十分だと初期の磁気特性値が低下するだけではなく、減磁曲線の角型性も低下する場合が多いので、前の章でお話をしましたように、温度が戻っても動作点の戻りが極端に悪くなり、熱による不可逆減磁が大きくなります。

すでにお話をしましたように、ネオジム磁石の着磁は、「コンデンサーパルス着磁器」を使います。磁石の形状、一度に着磁をする数量などによってフル着磁の電源パワーは異なってきますが、この図にあるように、最低でも電圧1500ボルト(V)、コンデンサー容量2000マイクロファラッド(μF)程度の電源は必要かもしれません。