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すぐ近くにあるネオジム磁石(7) <HDD中のネオジム磁石>

一昔前のHDD(ハードディスクドライブ)は、産業用コンピュータやパソコンの記憶装置としての利用がほとんどでした。しかし、現在ではそれだけではなく、テレビの録画機、複写機、ビデオゲーム、カーナビゲーション、家庭用・産業用監視カメラなど皆さんの身近なところに、かつ幅広い分野で使われています。特に、急速に普及してきているAIにとって、その心臓部といえる「データセンター」のストレージシステムにはなくてはならない機器となっています。

ただし、磁気記憶装置としてのHDDはいずれ半導体記憶装置のSSD(ソリッドステートドライブ)にすべて置き換わるのではないかと言われています。その一方では、HDDも新しい技術を取り入れながら、その記憶容量、データ転送速度も大きく進展してきていて、且つ長寿命・安定性ではSSDより上であり、簡単には活躍の世界が閉ざされることはないとも言われています。

今回はこれらHDDの中に重要部品として組み込まれている「ネオジム磁石」も含めて、HDDについてのお話をしていきたいと思います。

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HDDの各種用途例

<HDDの種類(用途・サイズ別)>

現在、磁気記憶装置としてのHDDは、その用途により、主に(1)大容量化・安定化・長寿命化が求められるデータセンター・サーバー向け、(2)コストパフォーマンスが求められるパソコン(外付け含む)、各種録画機、ゲーム機向けなどに分かれます。

■3.5インチHDD (サーバー・エンタープライズ用)

高容量、高信頼性が求められる中で、ヘリウム充填技術や、HAMR(熱アシスト磁気記録)技術を用いて大容量化(ディスク・プラッタ9~11枚、20~44TB)を実現しました。特にサーバー用高速機のディスクの回転数は10,000~15,000rpm前後、データ転送速度は300MB/s前後です。用途はデータセンター、クラウドストレージ、AIサーバー、監視カメラシステムなどがあります。

■3.5インチHDD (デスクトップ・NAS用)

一般的な据え置き型PCやネットワークストレージ(NAS)、TV録画用など。容量は数TB以下がほとんどであり、ディスクの回転数は5400rpm~7200rpm、データ転送速度は80~200MB/sが主流になります。

■2.5インチHDD(サーバー・エンタープライズ用)

小規模サーバー用途として3.5インチタイプからの移行が増加しています。3.5インチと同様、新技術により最大5TBの高容量タイプの製品もあり、サーバー用高速機のディスクの回転数は10,000~15,000rpm前後、データ転送速度は300MB/sに達します。用途は小規模データセンター、クラウドストレージ、AIサーバー、監視カメラシステムなどです。

■2.5インチHDD (ノートPC・ポータブル用)

薄型・小型が特長ですが、ポータブルHDDとして、SSD、USBメモリー以上の大容量のデータを持ち運ぶ用途が中心です。5400rpmモデルが一般的で、転送速度は約100MB/s〜140MB/s程度になります。

<HDDの内部構造>

1.ゼンマイ・歯車からIC・電子部品へ

HDDは、非常に精密な機械部品と電子回路で構成されており、高速で回転する円盤に磁気情報を記録します。その主な内部構造は、データセンター用、パソコン他用に限らずおおよそ以下の通りです。

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HDDの概略内部構造

■プラッタ (Platter)

データを記録するための、磁性体でコーティングされた円盤(ディスク)です。スピンドルモーターによって高速(一般用は毎分5,400回転から7,200回転、サーバー用は最大15,000回転など)で回転します。通常、複数枚が重ねて搭載されています。主にアルミニウム合金かガラス(またはガラスセラミック)の基板で作られています。表面にはコバルト(Co)、クロム(Cr)、白金(Pt)などの合金磁性体が塗布・コーティングされ、データを記録します。アルミは堅牢で安価、ガラスは高い平滑性と剛性を持ち、主に高密度・高速回転モデルに使われます。

■磁気ヘッド (Read/Write Head)

プラッタ上の磁気情報を読み取ったり、書き込んだりする小さな装置です。プラッタの表面をごくわずかな隙間(ナノメートル単位)で浮上しながら移動します。

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現在、レーザー光の熱によって記録面の保磁力を一時的に下げて書き込みを容易にする新技術、「熱アシスト記録・HAMR」によって、プラッタ10枚30TB以上の3.5インチHDDが商品化されています。

■アクチュエータアーム (Swing Arm)

磁気ヘッドを先端に固定し、プラッタ上の目的のトラック(データの記録場所)へ移動させるためのアームです。

■ボイスコイルモーター/アクチュエータ (Voice Coil Motor / Actuator)

強固な磁石とコイルを組み合わせ、アクチュエータアームを高速かつ精密に駆動させるモーター機構です。これにより、ヘッドはプラッタの内周から外周まで瞬時に移動できます。

一般的なHDDのVCMは1個になりますが、ボイスコイルを使用したマルチVCMとしては、現在製品化されている最大の数は 2個(デュアルVCM)までです。HDDの3.5インチという限られた筐体サイズ内に、複数のVCMとアームを配置する必要があるため、現状では2個が物理的なバランス(コスト、消費電力、スペース)の限界とされています。

※ネオジム磁石とVCMの構造

スピーカーの原理を応用し、永久磁石(ネオジム磁石)の磁界中でコイルに電流を流し、フレミングの左手の法則により直線的な力(推力)を発生させます。HDDのVCMではフラット型磁気回路を使い、2極着磁をした焼結型ネオジム磁石を1個またはコイルを挟んだ磁気回路では上下2個を使います。ネオジム磁石による強力な磁界により高速なヘッド移動と精密な位置決めが可能となりました。

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■スピンドルモーター (Spindle Motor)

磁気ヘッドがデータを読み書きできるように、1枚または複数のプラッタを一定の速度で回転させます。一般的なパソコン用では 7,200rpm(1分間に7,200回転)、サーバー用では最大 15,000rpm に達します。わずかな振動(振れ)もデータエラーの原因になるため、極めて高い回転精度が求められます。

※ネオジム磁石とスピンドルモーターの構造

HDDスピンドルモーターには、故障が少なく長寿命なDCブラシレスモーターが採用されています。

スペース効率を上げるため、プラッタを保持する「ハブ」の内側にモーターの主要部品(コイルや磁石)が収まるインハブ構造になっています。

ステータ(固定部)には駆動コイルが配置されており、通電によって磁界を発生させます。一般的に「3相・12極・9スロット」などの構成がとられます。スピンドルハブの内側に永久磁石が貼り付けられており、ステータの磁界との相互作用(吸引・反発)でロータが回転します。

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HDD用スピンドルモーターの基本構造例(12極・9スロット)

2.5インチ、3.5インチHDDは、デスクトップPCやサーバーなどで主に5,400rpmから7,200rpm、高性能モデルでは15,000rpmという高速で回転しており、これらを正確に制御するために、このような精密な多極ブラシレスモーターが使用されています。磁気回路の構成は8極9スロットや12極9スロットが使われていて、永久磁石は薄型リング形状と径方向(ラジアル方向)多極着磁に適したネオジムボンド磁石、サマリウム鉄窒素ボンド磁石が主力となります。

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スピンドルモーターとネオジムボンド磁石(大同特殊鋼)

<おわりに>

以上で「HDD中のネオジム磁石」の章は終了いたします。近年、PCなどではSSDへの置き換えが始まっていますが、直近では、次世代の記録技術であるHAMR(熱アシスト磁気記録)を利用して、3.5インチで44TBの大容量HDDが商品化されるなど、まだまだHDDは進化し続けています。したがって「AI時代の記憶装置」の主流の座は当面ゆるぎそうもありません。また、このHDDに使われているネオジム磁石やネオジムボンド磁石も、引き続き重要な電子部品して大きな役割を担ってゆくことになります。

(参考・引用資料)

「永久磁石が使用されているHDDのモータ」NeoMag通信:永久磁石の用途・応用シリーズ(1)

「HDD(Hard Disk Drive : ハードディスクドライブ)とは」Fsas Technologies

「わかりやすいHDD講座」吉田武史 IDEMA JAPAN 2022

「シーゲート、最大44TBの次世代HDD「Mozaic 4+」を発表」ZDNET 2026.03.16

その他AIによる情報