皆様の中にはX線CTやMRIなどでご自分の体の“断層撮影”による検査を受けたことがある方がいらっしゃると思います。X線CT(X線コンピュータ断層撮影装置:X-ray computed tomography)は人体の横断面の画像(断層画像)を得るのに最も普及している装置で、内臓や骨の位置によって透過するX線の量が異なるため、それが濃淡のパターンとして得られるものです。しかし、骨の奥にある臓器の画像は、骨が邪魔をして鮮明なものが得られないとか、放射線障害の危険性に注意が必要などの欠点があります。一方、MRI(磁気共鳴画像診断装置:Magnetic Resonance Imaging)は、強力な磁場と電波を利用して人体内部の断層画像を作る装置です。X線CTとは異なり、X線を使用しないため、放射線被ばくがなく、骨の奥の臓器の画像が得られます。
実はこのMRIの磁場発生源にネオジム磁石が使われているタイプがあり、医療に大きく役立っているのです。今回は、このネオジム磁石が使われているMRIについてのお話をしようと思います。

医療現場で使われているMRI(超電導型と永久磁石型)のイメージ図
<MRIの基本原理>
MRIの基本原理は、磁場と電波(高周波パルス)利用して人体の約60%を占める「水」に含まれる水素原子核(プロトン)の動きを時間との関係で検出、画像化しています。プロセスは大きく3つのステップに分けられます。

水分中のプロトンの動きと病変部の緩和時間の差
1.静磁場によるプロトンの整列(磁化)
プロトンはコマのように自転(スピン)していて、それぞれがごく小さな「磁石」としての性質(核磁気モーメント)を持っています。通常、体内ではこれらのプロトンはバラバラの方向を向いていて、磁力は打ち消し合っています。しかし、MRI装置の強力な磁場の中に入ると、プロトンは磁力線に沿って同じ方向(または真逆の方向)に整列し、コマの首振りのような運動(歳差運動)を始めます。
2.RFパルスの照射(共鳴)
整列したプロトンに対して、その歳差運動と同じ周波数(ラーモア周波数:64MHz)の電波(高周波・RFパルス)を特定の時間だけ照射します。この特定の電波を受けると、プロトンはエネルギーを吸収し、パタンと横倒しになります。これを磁気共鳴(Magnetic Resonance)と呼びます。
3.信号の放出(緩和)
次に、電波の照射を止めると、横倒しになっていたプロトンは吸収したエネルギーを放出しながら、元の縦方向の整列状態に戻ろうとします。このプロセスを緩和(Relaxation)と呼びます。
プロトンが元の状態に戻る際に微弱な電波(MR信号)が放出され、これをMRI装置のアンテナ(受信コイル)でキャッチします。
組織(水、脂肪、筋肉、がん細胞など)によってこの緩和時間が異なるため、この差を利用して白黒のコントラストを持った画像を作成します。
※MRI検査に時間がかかるわけ
MRI検査は20~40分前後かかります。これは、CT検査やX線検査の時間に比べるとかなり長いことが特徴です。これは、体の水分中のプロトン(水素原子核)を整列させるのに時間がかかるからです。
人体は60%が水分できています。この60%の水分を整列させて、その情報を画像化するには時間がかかります。しかも、MRIは撮影条件や撮影部位・方向を変えながら行いますので、さらに時間が必要になります。だから、MRI検査は長時間かかるのです。
<MRI装置の分類と構造>
現在のMRI装置は大きく分類すると、超電導(超伝導)型と永久磁石型になります。それぞれの特徴により、検査の目的やランニングコストなどを考慮した使い方がされています。
1.超電導型MRI
多くの大病院で設置されている高画質MRIの主流です。国内では約6,000~6,500台が設置されています。内部のコイルを「液体ヘリウム」などを用いて絶対零度近く(約-269℃)まで極低温に冷却し、電気抵抗がゼロになる「超電導状態」を利用して、強力かつ安定した強力な磁場(1.5~3テスラ以上)を作り出します。非常に精密な断層画像を得られる半面、大掛かりな冷却システムが必要で、液体ヘリウムの補充などのランニングコストが高くなります。また、強力な磁場中に入るので、身体内外にかかわらず磁性金属類の装着は非常に危険であり、安全面に細心の注意が必要になってきます。
さらに、検査中カンカンという特有の音がうるさい場合があります。脳神経外科や整形外科、がんの精密検査などにおいて確実な診断を必要とする場合は超電導型が用いられるのが一般的です。

超電導型MRIの構造イメージ図(細部は実際と異なります)
2.永久磁石型オープンMRI
電力を必要とせず、常に磁力を発する巨大な永久磁石そのものを使用します。ネオジム磁石が工業化されて以来、急速に生産台数が増加しました。現在、国内には1,000台ほど設置されています。主にオープン型のMRIで採用されています。
永久磁石の磁場だけですから冷却システムが不要なため維持費や消費電力が低く抑えられます。しかし、装置自体が非常に重く、発生できる磁場強度は0.2~0.6テスラ程度であり、画像の精密性は超電導方式に及びません。また磁場が小さいため、必要な画像を得るためには時間がかかります。
一方、装置の左右が広く開いていて圧迫感が少なく、且つ作動中は耳障りな音がなく静粛性が高くなっています。また、難しいコイルの感度補正が必要なく、捜査は比較的易しくなっています。漏洩磁場が少なく、設置場所も超伝導方式ほど広い部屋は必要ありません。
主に、頭部や関節などの整形外科領域、小児の検査、閉所恐怖症の患者への対応などに利用されます。

永久磁石型オープンMRIの構造イメージ図(細部は実際と異なります)
<おわりに>
約40年前にネオジム磁石が量産化されて以来、永久磁石型MRIが急速に増加した時期がありました。しかし、現在では高画質化を求めるニーズや超電導マグネットの低コスト化が進み、「永久磁石型(0.2~0.6テスラ)から超電導型(1.5テスラ以上)への置換え」を進める病院も増えてきました。
さらに最近では、超電導コイルを高温超伝導体で構成した高温超電導MRIが開発されているとの報告もあり、まもなく液体窒素冷却で済むMRIも登場するでしょう。
そうはいっても現時点では、「高磁場は超電導型」「低磁場・開放型は永久磁石型」と、目的や用途に応じた棲み分けのニーズは依然として存在し、特に運用コストの低さを活かして整形外科などのクリニックを中心に、永久磁石型もまだまだ根強く支持されています。
もし皆様が人間ドックなどでMRI検査を受ける機会がありましたら、担当医に「このMRIは永久磁石型か?超電導型か?磁場は何テスラくらいか?」というような質問をしてみてください。
なお、「超伝導」と「超電導」は全く同じ現象を指す言葉ですが、「超伝導」は基礎物理学や文部科学省などの学術分野で物質あるいは物質の性質として使われることが多く、「超電導」は産業一般や経済産業省などの分野で超伝導物質の応用として好まれる傾向があるようです。
(参考・引用資料)
「永久磁石の用途・応用シリーズ(7):MRIへの応用例」ネオマグ通信バックナンバー
「超電導オープンMRI:OASIS登場」HITACHI Special 株式会社日立メディコ
「MR古今東西 永久磁石タイプと超電導タイプのMRI,実際どう違う?」innavi net 2018-9-25
「[Vol.18]MRIってどんな検査? | なるほど!MRIの仕組み」平成横浜病院
その他AIによる情報

