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超伝導磁石の可能性と応用シリーズ(2)

【超伝導物質の発見と超伝導になる条件】

前回は超伝導とはどのようなことかという基礎的な解説が中心でしたが、今回は超伝導を示す元素、物質や超伝導になる条件について、少し専門的な話をさせていただきます。

1.超伝導を示す元素(金属)

1911年にオランダのオネスによって、液体ヘリウム温度4.2K(-268.8℃)で水銀(Hg)が超伝導状態を示すことが最初に発見されましたが、その後鉛(Pb)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)などの超伝導状態が次々に発見されました。現在では、29種の元素が液体ヘリウム温度に冷やすと超伝導状態になることが知られています。

この中で、最も臨界温度Tc(超伝導になる温度)が高いのはニオブ(Nb)で、9.2K(-263.8℃)です。その他、超高圧、薄膜などの特殊条件下で超伝導体になる元素が現在まで22種類確認されていて、合計51種類の元素が超伝導体ということになります。

2.超伝導状態の限界

オネスは水銀や鉛で超伝導状態の色々な実験を行いましたが、電気抵抗ゼロの状態には温度だけではなく、電流や磁場の限界があることを確認したのです。まず直径1mmの鉛線では、液体ヘリウム温度に冷却しても、140A(アンペア)以上の電流を流すと電気抵抗が生じてしまうこと。また、この鉛線に800G(ガウス)以上の磁場を加えても超伝導の性質を失ってしまうことなどです。

このように超伝導を示す物質も超伝導状態になる(超伝導状態が壊れる)条件があることが分かったのです。まとめてみると、その限界点は物質ごとに次の3種類の物理条件によって決定されます。

(1)温度の限界(臨界温度Tc)

前項で解説しましたように、物質が超伝導状態になる(=超伝導状態が常伝導状態に戻る)温度を臨界温度(転移温度)Tcと呼びます。

(2)電流の限界(臨界電流Ic)

超伝導状態では電気抵抗Rがゼロですから、ジュール熱(Q=I2Rt)は発生しないことになり、大電流を通電できる可能性があります。しかし、電流を増やすと、あるところで超伝導状態が電気抵抗のある状態(常伝導状態)に戻ってしまい、これが臨界電流Icといわれるものです。

(3)磁場の限界(臨界磁場Hc)

超伝導状態にある物質に磁場を加えて徐々に強くしてゆくと、あるところで突然超伝導状態が破れて、常伝導状態になります。この磁場を臨界磁場Hcと呼びます。(磁性体の保磁力Hcではない)

超伝導磁石の可能性と応用シリーズ-画像04

3.超伝導物質を作る

超伝導になる元素・金属はまだ少しずつ増えていますが、近年になり化合物や合金で超伝導物質を作ったり、発見したりする試みが本格的になってきました。液体ヘリウム温度以下の低温度に保たなければならないのでは、実用上大きな制約があります。したがって、高い臨界温度Tcを有する物質を探す研究が中心となり、下図のように合金から金属間化合物、酸化物にいたるまで、盛んに研究されるようになり、今までに2000種近くの超伝導物質が発表されています。

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4.超伝導体発見のパターンとインパクト

超伝導体発見の過程は、(1)既に知られていた元素や合金、化合物を極低温に冷却してみて超伝導の性質を発見した、(2-1)新しい物質であるが、既に超伝導物質として知られていた物質を改良した、(2-2)全く新しい結晶構造や組成を有する物質を合成した、等に分けられます。それらの効果と世の中に与えるインパクトを以下にまとめてみました。特に全く新しい超電導物質が発見、合成された時は世界中に大きな反響を呼び、しばらくは、その物質周辺に研究者の研究・開発が殺到するようです。

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以上、今回は超伝導状態の限界と超伝導物質の発見と研究の拡がりについての話でしたが、次回からは具体的な超伝導物質の特徴とTc上昇の歴史、超伝導と磁気などについて、さらに詳しい解説をさせていただきます。

(参考資料)

「トコトンやさしい超伝導の本」 下山淳一 日刊工業新聞社