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超伝導磁石の可能性と応用シリーズ(3)

【高温超伝導体の開発競争とTcの上昇】

今月は、近年新超伝導物質発見・開発されてきた具体的な化合物名とその特徴をご紹介しながら臨界温度Tcがめざましい上昇をしてきた経緯を解説しましょう。

1.酸化物高温超伝導材料の出現

右図は超伝導材料とTcの変遷をまとめたもので、青字が金属および金属間化合物超伝導材料で、赤字の化合物が酸化物超伝導材料です。ご覧のように液体窒素温度で超伝導体になる高温超伝導材料は、今のところ酸化物系のみとなっています。

1986年までに金属系材料で、徐々にTcが上昇してゆきましたが、酸化物材料の出現で一気に液体窒素温度を越えてきました。1986年スイスIBM社のベドノルツとミューラーがLa-Ba-Cu-O系で30Kの超伝導材料を発見してから、酸化物超伝導材料が一躍注目され始め、その後種々の酸化物超伝導体が発表されてきました。特にYBCO(YBa2Cu3O7-δ)(Tc~93K)やBSCCO(Bi2Sr2Ca2Cu3O10)(Tc~109K)といった銅酸化物高温超伝導体が次々に発表され、液体窒素温度77K(-196℃)で十分超伝導になる物質が生まれたのです。ベドノルツとミューラーにはその功績により、翌年の1987年には早くもノーベル物理学賞が授与されていますが、異例のスピード受賞であり、その発見がいかに驚きを持って迎えられたかが分かると思います。

現在では、常圧下では最高のTcが138K(-135℃)、31万気圧という高圧下でTcが164K(-109℃)の材料も発見されていて、温度という障壁はかなり低くなってきていますが、実用上は依然としてその壁は厚く、室温での超伝導材料の出現が切望されています。

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2.高温超伝導体探し、1987年当時の熱狂

ここで、当時の高温超伝導材料開発のフィーバー振りをご紹介しましょう。

前図にもあるように、最初のベドノルツとミューラーがランタン-バリウム-銅酸化物を発見し、直後にランタン-ストロンチウム-銅酸化物のTcが40K(-233℃)に上昇することが世界に発表されると、物理、化学を中心としたさまざまな分野の研究者が、いっせいに高温超伝導の世界に乗り込んできて、さらなる大発見の先陣を切ろうと、我先に研究を開始しました。当時のテレビや新聞はこの高温超伝導のニュースや記事をセンセーショナルに報道し、一般の人もいやでも“超伝導”という文字や言葉を覚え、その意味を理解するようになったのです。

しかしながら一方では、功を焦った発表も多く、昼夜を問わず実験が繰り返されている中で、画期的なデータが取得できたとして発表されたもののうち、実は実験のミスや測定のミスの結果であった場合も多く、後で検証してがっかりしたことが何回もあったようです。研究者の“新超伝導体であって欲しい”という期待が大き過ぎて、勇み足をする例が後を立ちませんでした。このような状況を憂慮して、当時の東京大学の田中昭二教授は1987年3月に以下のような新超伝導体が必要な4つの要素を発表しました。

  • 電気抵抗がゼロになる。
  • マイスナー効果を示す。
  • 結晶構造が特定できている。
  • 再現性がある。

このようなタイムリーな警鐘により勇み足の発表は激減しましたが、それでもなお異常に高いTcの報告やまゆつばものの特許申請が、当時から現在までまだまだ散見されるようです。先端のバイオ研究などにも同じような問題が起こっていますが、実験の手違いや測定ミスならまだしも、捏造などというゆゆしきことは絶対にあってはならないことであり、それには前述の4つの要素の中の、特に“再現性”ということを研究者は肝に命じる必要があります。

3.高温超伝導体の主な製法について

現時点での高温超伝導材料は酸化物=セラミックスであり、瀬戸物やフェライト磁石と同じ仲間になります。作り方は主に3種類があり、(1)材料を成形して焼き固める、(2)超高圧下で合成する、(3)層状構造の物質を1原子層ずつ積み上げる薄膜で合成する。等があります。(1)、(2)はバルク(固まり)の超伝導体が必要な場合で、(3)は電子回路やパッチアンテナなどの小さく、薄いものに適しています。特に(1)の製法は、原料と電気炉および簡単なプレス機があれば実験ができますから、多くの研究者、技術者が研究開発に参入し易かったのですが、一般的な条件下ではすぐネタ切れになってしまい、(2)、(3)のような特殊条件下での新しい物質、結晶構造の追及が拡大して行きました。

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次回は超伝導と磁気、超伝導用の新しい冷凍技術などについての解説を予定しています。

(参考資料)

「トコトンやさしい超伝導の本」 下山淳一 日刊工業新聞社

「おもしろい磁石の話」(社)未踏科学技術協会 日刊工業新聞社