希土類磁石(ネオジム(ネオジウム)磁石、サマコバ磁石)、フェライト磁石、アルニコ磁石、など磁石マグネット製品の特注製作・在庫販売

ネオジム磁石の製造方法シリーズ(6)

【ネオジム磁石の機械加工工程】

下図はネオジム磁石の製造工程です。今月はこの中の加工工程についてのお話をします。加工工程の主な目的は、焼結・熱処理されたネオジム磁石焼結母材焼結ブロック、または焼結単体を目的の形状、寸法に仕上げることです。この工程で使用する機械加工機は目的の形状、寸法により多様であり、ほとんどの場合複数種の加工方法が取られて仕上げられます。以下、ネオジム磁石の加工に使用される代表的な加工機について、その原理と特徴について解説してみたいと思います。

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1.切断加工

切断加工は内周または外周スライサーを用います。切断精度の要求される製品または極薄製品は内周スライサーを使うことが多いのですが、一般的には外周マルチブレードスライサーを使います。切断ブレードは人工ダイヤモンドを電着したもので、ブレードの厚みが厚いと切断取りしろが多くなり、材料歩留まりが悪化します。金型でのニアネットシェイプ品ではなく、母材ブロックからの切り出し品で使用する加工方法だといえます。この後さらに別の加工を加え、最終形状にします。

2.平面研削

平面研削盤は工作物の平面を研削する研削盤です。工作物の運動と砥石の当て方によって下図の様な様々な研削方法があります。

構造的に

・砥石軸の向きにより・・・・・・・・・●立軸型 ●横軸型 ●可変型 ●複合型

・テーブル形状と運動形状により・・・・●角テーブル往復型 ●丸テーブル回転型

などがあります。

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3.外周研削

円筒または円柱工作物の外周の研削を行う工作機械を円筒研削盤(センターレスグラインダー)といいます。円筒研削盤は工作物を両センターにて支持し、ケレ―などの補助具にて工作物を回転させ、かつ砥石を回転させながら切り込み、工作物を加工します。加工方式として、工作物と砥石の基本的な動きの差異により、下記の通り3つの方式があります。

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4.穴あけ加工、複雑形状加工

穴あけ加工はボール盤または旋盤を使うことが多ようです。また、複雑形状の加工は、ワイヤー放電加工機を使います。ネオジム磁石は金属磁石のため導電性が高く、放電加工が容易に行える材質です。

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<放電加工の原理>

下の図を見て左側が加工ワークで、右側の円がワイヤー線の断面と考えてください。

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(1)ワイヤー(電極)と金属(製品)は共に純水中で絶縁状態にある。製品とワイヤーの隙間(極間)が数μmから数十μmぐらいまで近づくと、ついにお互いの絶縁が破壊され火花放電が始まる。
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(2)放電が発生するとパルス電流が流れその間が、アーク柱と言う密度の高い放電状態になる。 そこでは数千度の高温が発生し、金属が溶融しだす。
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(3)アーク柱は品物やワイヤーと一緒に水中にあるので、高温部分に触れた水が爆発的に蒸発する。 その圧力で溶融した金属を吹き飛ばす。
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(4)パルスが切れて電流が流れなくなると、回りの水が流れ込んできて細かなクズを押し流す排除しながら冷却もされる。そして極間が確保され絶縁が回復する。そして(1)に戻り繰り返す。

以上のように、ネオジム磁石には様々な機械加工の方法がありますが、成形方法、形状、寸法、寸法精度などにより、より効率的な加工方法が選択されます。

次回は防錆のための表面処理について解説をいたします。

(参考資料)

「希土類永久磁石」俵 好夫・大橋 健 (森北出版)

(有)ミクロ技研ホームページ