希土類磁石(ネオジム(ネオジウム)磁石、サマコバ磁石)、フェライト磁石、アルニコ磁石、など磁石マグネット製品の特注製作・在庫販売

モータの基礎と永久磁石シリーズ(10)

【モータの回転を支える軸受】

今月で“モータの基礎と永久磁石シリーズ”はとりあえず終了いたしますが、最後に、モータの重要な構成部品である軸受についての解説をさせていただきます。

モータはロータとステータ間に作用する磁気エネルギーを回転力に変換しているわけですが、ここで回転力を得るためには回転構造を有するロータを必要とします。このため、回転形のモータではロータを支える軸受を必要とします。

さて、軸受構造を大きく分けると、“ころがり軸受”“すべり軸受”の2種類に分かれます。ころがり軸受の代表としてはボールベアリングがあります。また、すべり軸受としては空気軸受、オイルレスメタルなどがあります。なお、空気軸受(エアベアリング)の中にはコンプレッサを用いた静圧ベアリングと、動圧を利用したスパイラルグルーブベアリングなどがあります。その他、特殊なものとして磁気の反発力を利用した磁気軸受もあります。下図は種々の軸受をまとめたものです。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像1201

1.高性能流体軸受としての空気軸受

ところで、空気の力を利用した軸受をエアベアリングと呼びますが、これにはコンプレッサの圧縮空気を利用した静圧軸受と、モータが回転することによって発生する空気のポンピング作用によって非接触状態になる動圧軸受があります。これらはいずれも液体膜(空気層)を形成して、モータ軸を非接触回転するもので、前者はモータが回転していなくても非接触状態となっています。これに対して後者はモータが、ある回転以上にならないと非接触状態とはなりません。

主な用途としては、静圧型は装置が大掛りとなるので精密加工用の工作機械などに使われています。また、動圧型は高速回転のレーザスキャナー、レーザプリンタなどに良く使われています。

次図は空気軸受の簡単な構造を表したもので上側が静圧軸受の構造を、また下側が動圧軸受の概略構造をそれぞれ表しています。原理的には、両者はいずれも、回転軸と固定部の間にミクロンオーダの空気層をつくり、非接触構造としだむので、軸受部の摩耗がなく、安定に高速回転を維持することができます。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像1202

2.回転音がしない磁気軸受

モ-夕の構造でお分かりのように、回転型のモータには必ず軸受が使われています。これは、ロータの回転軸を支えるもので、一般的には回転軸の左右両端に取り付けられています。ところで、前述しましたように、軸受の代表にはボールベアリング、オイルレスメタルなどがありますが、これらはいずれも回転音を発生し、摩耗し、さらに潤滑油の油切れを起こします。

このため、整流子の無いインダクションモータや、ブラシレスモータでも、機械的な回転音は避けられません。つまり、軸受部が摩耗したり、騒音(ノイズ)を発生するということです。

このような場合、磁気力による非接触構造の軸受を使えば、先に取り上げた問題はすべて解決されます。これが“磁気軸受”と呼ばれるもので、これを用いたモータは、回転音をほとんど発生しませんので、一般のモータのように聴覚上でその回転を確認することは簡単にはできません。

その他磁気軸受の特徴をまとめると、軸受部の摩擦が無いので、(1)回転エネルギーの節約ができる、(2)高速回転型のモータを造ることができる、(3) 宇宙でも使える、(4)軸受部の油ギレがない、などです。ただし、構造が複雑で、高価なことが短所といえます。

3.磁気軸受の構造

さて、磁気軸受は、その構造上、能動型と、受動型に分類されますが、前者の能動型は複数の電磁石を利用し、その磁力を磁気センサで検知し、フィードバック系を構成して磁力のバランスが一定となるよう自動制御するもので、優れた回転特性を有します。

さて、磁気軸受は、その構造上、能動型と、受動型に分類されますが、前者の能動型は複数の電磁石を利用し、その磁力を磁気センサで検知し、フィードバック系を構成して磁力のバランスが一定となるよう自動制御するもので、優れた回転特性を有します。

強力な希土類磁石が量産化されるようになった1970年以降は、希土類磁石と電磁石を併用したハイブリッド型の磁気軸受が利用されるようになりました。そ の一例を右下図に示します。回転軸を取り巻くリング型の永久磁石の磁束を、電磁石が発生する磁束によって制御する方式です。電磁石だけで構成される磁気軸受よりも消費電力が少なく、制御特性もすぐれています。

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これに対して、下図のような受動型は永久磁石だけで構成した磁気反発(吸引)力による非接触構造の軸受で、これは磁力のアンバランスが生じやすく、一定の性能を保持することが困難です。このため、実用的な磁気軸受はその大半が、自動制御系を導入した、能動型が使われています。

モータの基礎と永久磁石シリーズ-画像1204

【モータの基礎と永久磁石シリーズ終了】

3月から10回に渡り、動力源となる電気エネルギーの種類や駆動原理、構造などで分類される種々のモータについて解説をしてまいりました。また、本シリーズ初回(3月号)で詳細にお話しましたように、あらゆる産業分野で各モータの特長を生かした使われ方をしながら、さらに一層の技術革新が進んでいます。そして、本シリーズを通してモータの性能向上に対する永久磁石の役割がますます重要になっているのがお分かりいただけたのではないかと思います。また、機会がありましたら、回転モータやリニアモータの最新技術のお話をしたいと思っています。

なお、次回からは、ネオジム磁石などでその原料動向が話題になっています“レアアース(希土類)”および“レアメタル(希少金属)”についての解説シリーズとする予定ですのでご期待ください。

(参考資料)

「トコトンやさしい磁石の本」山川正光 著 (日刊工業新聞社)

「小型モータのすべてがわかる」 見城尚志、佐渡友 茂、木村 玄 著 (技術評論社)

「よくわかる最新モータ技術の基本とメカニズム」 井手 萬盛 著 (秀和システム)

「じしゃく忍法帳」 TDK株式会社ホームページ