希土類磁石(ネオジム(ネオジウム)磁石、サマコバ磁石)、フェライト磁石、アルニコ磁石、など磁石マグネット製品の特注製作・在庫販売

エネルギー資源の現状と将来(22)<再生可能エネルギー(6)-その5>

明けましておめでとうございます。本年も引き続きNeoMag通信のご愛読よろしくお願い申し上げます。昨年12月のCOP21で議論されたように、世界的な温暖化がますます大きな問題となってきています。そしてCO2の排出を低減するために、いかに化石燃料の消費を抑えるかが喫緊の課題となってきました。このような意味でも再生可能エネルギーの活用を世界中で進めることが、将来に渡っていかに重要かお分かり頂けると思います。

そこで、今月は皆さんが普段詳細な情報に触れることが少ないかもしれませんが、火山大国の日本にとって重要且つ活用すべきエネルギーとしての「地熱発電」を取り上げてみました。

(6-7)地熱発電

地熱発電は、太陽光発電や風力発電などのように、直接間接に関わらず太陽光エネルギーを利用した発電方式とは異なり、地球内部の熱エネルギーを利用した発電方法です。火山帯には地下数キロメートルから数10キロメートルのところにマグマ溜まりがあります。溜まっているマグマは、1000℃もの高温で周囲の岩石を熱します。この熱せられた岩石中に地表から雨水や地下水が割れ目を通って到達すると、熱せられて地熱貯留層と呼ばれる200~350℃の熱水あるいは蒸気として溜まります。

地熱発電は、この地中深くにある地熱貯留層から井戸で蒸気あるいは熱水を汲み出し、蒸気の力で発電機のタービンを回して電気をつくります。蒸気タービンで発電を終えた低温の蒸気は、再び水に戻され別の井戸を通して再び地中深くに戻されます。すなわち、エネルギー変換は、地球内部からの熱エネルギー、蒸気の運動エネルギー、タービンの回転の運動エネルギー、電気エネルギーとなります。

[1]フラッシュ式地熱発電

フラッシュ発電は、主に200℃以上の高温地熱流体での発電に適しており、地熱流体中の蒸気で直接タービンを回します。“シングルフラッシュ方式”は次のように発電を行います。

エネルギー資源の現状と将来-画像160101

(1)地熱貯留層に生産井を掘り、地熱流体を取り出す。

(2)セパレータ(気水分離器)で地熱流体を熱水と蒸気とに分け、熱水は還元井で地下に戻す。

(3)蒸気でタービンを回転させ、発電する。

(4)発電し終わった蒸気は復水器で温水にし、さらに冷却塔で冷ました後、復水器に循環して蒸気の冷却に使用する。

“ダブルフラッシュ方式”は、セパレータで分離した熱水をフラッシャー(減圧器)に導入して低圧の蒸気をさらに取り出し、高圧蒸気と低圧蒸気の両方でタービンを回す方式です。高温高圧の地熱流体の場合に採用され、シングルフラッシュよりも約20%出力が増加します。八丁原発電所や森発電所で採用されています。海外に目を向けると、ニュージーランドにはトリプルフラッシュ式の発電所があります。

[2]バイナリー式地熱発電

しかし、わが国には、40~200℃の中低温の熱水も豊富にあります。考えてみれば、タービンは気体の直線的な運動を利用するものなので、水蒸気しか使えないことはありません。そこで、水よりも沸点の低い別の二次媒体、たとえば沸点が36℃のペンタンを温めて気体にしてタービンを回します。まず中低温の熱水をくみ上げます。そのままでは発電に+分な水蒸気が得られないので、沸点の低いペンタンを温めて気化させます。くみ上げた熱水は熱をペンタンに与えて冷えてまた地中に戻されます。

一方、気化したペンタンはタービンを回して発電します。そしてその後冷やされて液体に戻り、再びくみ上げた熱水で気化されます。この方法では中低温の熱水とペンタンがくるくる回っているので、“バイナリーサイクル方式”と呼ばれています。

エネルギー資源の現状と将来-画像160102

(1)生産井から地熱流体を取り出す。

(2)地熱流体で二次媒体を温め、蒸気化する。二次媒体を温めた後の地熱流体は、還元井から地下に戻す。

(3)二次媒体の蒸気でタービンを回転させ発電する。

(4)発電し終わった二次媒体は、凝縮器で液体に戻し、循環ポンプで再度、蒸発器に送る。

[3]地熱発電の特徴

(1)豊富な資源量

火山国である日本は、アメリカ、インドネシアに次ぐ、世界第3位(2,347万kW相当)の地熱資源大国です。国内で稼働中の地熱発電所の出力は、29地点で合計約52万kWと、地熱資源量のわずか2.2%であり、この発電出力は世界第9位です(2015年6月現在)。日本には豊富な地熱資源量がありながら、十分利用されずにいます。

エネルギー資源の現状と将来-画像160103

(2)クリーンなエネルギー

発電所建設から運転中、発電所解体までに発生する全てのCO2について計算した数値(発生する全CO2排出量を全発電量で割った数値)を「ライフサイクルCO2排出量」と言います。地熱発電は、ライフサイクルCO2排出量が最も少ない発電方法の一つで、地球温暖化の軽減に効果的です。

エネルギー資源の現状と将来-画像160104

(3)安定的な電源

地熱発電は、昼夜・天候を問わず24時間連続して発電することができます。これにより、地熱発電は太陽光発電や風力発電と比べて設備容量は少ないものの、設備容量に対する発電電力量が多く、利用率が高い安定電源です。また、自然エネルギーの中では出力も安定しており、ベースロード電源として利用できます。

エネルギー資源の現状と将来-画像160105

(4)高い設備利用率

太陽光発電や風力発電と比べて、地熱発電の特徴は設備利用率が高いことです。およそ70-80%といわれています。地熱は太陽光や風のように天候に左右されることがなく、また昼夜変わらず発電できるためです。2010年度末のデータでまず、地熱発電、風力発電、太陽光発電の設備容量は、それぞれ54万キロワット、244万キロワット、388万キロワットでした。地熱発電に比べて、風力発電は4.5倍、太陽光発電は7倍の設備容量でした。しかし、それぞれの設備利用率が55%、20%、12%程度ですから、年間発電量を比べてみると、地熱発電は約27億キロワット時、太陽光発電の約40億キロワット時、風力発電の約43キロワット時と設備容量ほどの差はなくなります。発電コストは、1キロワット時あたり9.2~11.6円と試算されています。

[4]日本の地熱発電の課題

日本は世界第3位の地熱資源大国でありながら、2010年において、現在稼動中の地熱発電所の総設備容量は53万キロワットで、世界9位です。フィリピンは、地熱資源量は日本の4分の1程度なのですが発電設備容量としては日本の3.5倍もあります。

日本の地熱発電の歴史は古く、1966年に岩手県から始まりました。その後オイルショックもあり、次々と地熱発電所が建設され、1996年には設備容量が50万キロワットに達しました。しかし、1999年以降、新しい地熱発電所は建設されていません。地熱発電の設備利用率は高いのですが、そもそものエネルギー変換効率が低く、1カ所あたりの発電量が少ないことが問題です。日本最大の八丁原地熱発電所でも11万キロワットで、多くは5万キロワット以下です。2009年の発電電力量は日本の総発電電力量のわずか0.3%にしかすぎません。また、地熱資源が豊富な場所の8割が国立・国定公園内にあります。しかし、2010年には国立公園の域外から井戸を斜めに掘る傾斜掘削方式が容認され、新たな井戸の掘削も始まっています。

1999年以降、設備容量は変わっていないのですが、年間総発電量は1997年をピークに減少傾向にあります。これはつまり、設備利用率が減少していることになります。これは、熱源のエネルギーが枯渇しているのではなく、設備のメンテナンスが十分でなかったことが原因のようです。高い設備利用率を維持するには、日ごろのメンテナンスも重要です。

世界の地熱発電の設備容量も年間総発電量も増加しています。2005年度では、世界の設備容量も年間総発電量も日本の20倍弱程度になっています。地熱大国日本では一定の安定した発電が見込める設備として着実な開発が期待されます。

エネルギー資源の現状と将来-画像160106

エネルギー資源の現状と将来-画像160107

[5]日本の地熱発電所

日本で稼働中の地熱発電所の設備容量は合計約52万kW、世界第9位です(2015年6月現在)。

エネルギー資源の現状と将来-画像160108

以上のように、今月は地熱発電について調べてみましたが、どうやら火山大国でありながら、また世界的に誇れる技術がありながら、日本では地熱の利用が世界の火山国に比べてかなり遅れているようです。言い換えれば、「地熱エネルギー」が日本で活躍できる可能性が十分残っているということでしょう。

次回は「水力発電」についてご報告する予定です。

<参考・引用資料>

「トコトンやさしい再生可能エネルギーの本」太田健一郎 監修、石原顕光 著 日刊工業新聞社

「なっとく再生可能エネルギー」資源エネルギー庁ホームページ

「地熱発電に関する情報」日本地熱発電協会ホームページ