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地球科学と生命の誕生・進化(9)<原生代の地球環境と生命活動(3)>

地球上の生命は、太古代のシアノバクテリアを代表とする原始微生物の誕生で幕を開けました。さらに原生代に入ると、前2章でお話をしましたように、地球環境に大きな変化が何回か起こりました。それが、3回にわたる「全球凍結(スノーボールアース)」イベントと2回の「大酸化(酸素化)」イベントでした。実はそれらの一大地球環境イベントが、様々な真核生物を創り出し、やがて各種多細胞生物の出現となります。

今月は「原生代の地球環境と生命活動」に関する最終章として、原生代末期の「多細胞生物・動物の出現」についてのお話をしたいと思います。ここで再度、時代区分上の原生代の位置と、前章で触れました原生代に起きた重大イベントについて確認しておきましょう。

人類が文字を使い始めてからの「歴史時代」に対して、 地層や化石に基づいて設定された時代区分を「地質時代」と呼びます。 地質時代は、冥王代、太古代、原生代、顕生代として、大分類の「代」に分け、また、それぞれを中分類の「代」に分けています。さらに、「代」を細分化した時代を「紀」と呼びます。こうした区分の境界では、生物の大量絶滅が繰り返し起こっています。

 

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時代区分における原生代の位置づけ(NeoMag)

 

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原生代の紀区分(NeoMag)

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原生代に起きたイベントと新生物の出現(NeoMag)

 

[原生代の地球環境と生命活動(3)-1]生命を進化させた全球凍結と大酸化イベント

前2章でお話をしましたように、地球の誕生以来、赤道地域まで凍りつく全球凍結期(スノーボールアース)は3回あったと考えられています。1回目は原生代初期の「マクガニン全球凍結」(25億~23億年前)であり、2回目、3回目は原生代後期(新原生代)になります。この2回の全球凍結期が、「スターチアン全球凍結」(7億3000万~7億年前)と、その直後に起きた「マリノアン全球凍結」(6億5000万~6億3500万年前)になります。

なお、全球凍結の原因については前々章でも触れましたが、現在二つの有力な仮説が知られています。一つは「二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの減少説」であり、二つ目の仮説は「銀河宇宙線の激増による雲形成説」になります。さらに、銀河宇宙線の激増要因には、“地球磁場の衰弱説”と“太陽系の銀河内渦状腕通過説”の二つの仮説が提唱されています。

 

そして、前章でもお話をしました「大酸化イベント」につながります。原生代初期~中期にわたり、プレートテクトニクスによりヌーナ(ヌナ)を代表とする「超大陸」が出現し、大きく成長してゆきました。全球凍結後の温暖化過程でこれらの陸地からのミネラルが供給され、シアノバクテリアが激増してゆき、その結果、地球大気には光合成による酸素が増加して酸素濃度は現在にほぼ近いレベルにまで上昇したとされています。原生代初期のマクガニン氷河期後の大酸化イベントでは、「真核生物」が出現しましたが、原生代末期のスターチアン、マリノアン氷河期後の大酸化イベントではついに「多細胞生物」の出現となります。

 

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超大陸ヌーナの誕生

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酸素を放出するシアノバクテリア

 

多細胞動物はコラーゲンという、細胞同士の接着や結合組織に力学的強度を与える機能を持つタンパク質を生産して多細胞化・大型化を可能にしたと考えられていますが、コラーゲンの合成には大量の酸素が必要だとされています。この点は、動物の起源と大気中の酸素濃度の関係として、古くから指摘されているものです。

全球凍結と大気中の酸素濃度上昇イベント、そして生物の大進化は、原生代のというよりも、地球史における最重要のできごとともいうべきものです。地球環境と生命を劇的に変えた、地球史上類を見ない複数のできごとが互いに関係し合っていたのだとしたら、それが原生代において生じたのは偶然だったのか、それとも必然だったのか、大変興味あるところです。

 

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大気中の酸素レベルの変遷(田近英一:2019.10.26武田セミナー)

 

[原生代の地球環境と生命活動(3)-2]多細胞生物の誕生とエディアカラ生物群

マリノアン全球凍結が終了した直後、再び大陸から海中へのリンやカルシウムなどの栄養塩供給が急増しました。そして、多細胞生物が現れました。彼らは、単細胞真核生物の100万倍、原核生物の実に1兆倍もの大きさを持つようになっていったのです。この進化は、生命の発展にとって非常に大きな意味を持っていました。なお、中国で発見された最古の海綿動物化石の年代は6億3500万年前になります。したがって、海綿の誕生はそれよりも前だったことがわかります。

 

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海綿の化石(中国の例)

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海の中の海綿

 

その後、さらに地球は全球凍結ではありませんが、何回かの小氷河期を迎えます。「ガスキアーズ小氷河期」(5億8000万年前)の直後には、涛洋中への硝酸の供給量が増えるとともにリン酸泡の供給量も増加した。そして、この時期、原生代後期の「クライオジェニアン紀」に続く「エディアカラ(エディアカラン)紀」(約6億3500万~約5億4100万年前)に、ディッキンソニアなどで知られるエディアカラ生物群が一斉に出現しました。

その証拠に、現代になってから、地球史上最初の大型の「エディアカラ紀生物化石」が産出しました。大きいものは数十センチメートルから1~2メートルという、それまで見られないスケールのものです。オーストラリア南部のエディアカラ丘陵で発見されたこれらの化石は、そのサイズと多様性、そして多量に産出することが大きな特徴で、「エディアカラ化石群」または「エディアカラ生物群」と呼ばれます。同時代の地層が分布するロシアの白海沿岸、カナダのニューファンドランド島、アフリカ南部のナミビアなどでも同じ化石群が産出することが知られています。

 

カナダのニューファンドランド島では、約5億8000万年前のガスキアーズ小氷河時代のすぐ後の時代の地層からの代表的な化石の一つであるチャルニア・ワルディが初めて産出します。これらの生物は、硬骨格を持たない軟組織のみから成っており、通常であれば化石としては保存されにくいはずなのですが、海底の乱泥流に一瞬で飲み込まれた結果、運よく保存されたようです。

ほかにも特徴的な形態の化石がいろいろと発見されています。例えば、平べったいエアマットのような形状で最大1.2メートルにも及ぶディッキンソニア、仲縮する吻のような器官を頭部に持つ体長数センチメートルのキンベレフ、円形の体がいくつかの節に分かれているヨルギア、葉っぱのような形をした最長2メートルに達するエディアカラ生物群最大のチャルニアなどが代表的なものです。

 

ただ、これらと現生生物との系統関係がどうなっているのかについてはよく分かっていません。エディアカラ生物群は、大型で明らかに多細胞動物のようにも見えるため、動物の祖先に当たる可能性が考えられます。その独自の形態からどの現生種とも近縁関係のない絶滅種であるという考え方もありましたが、少なくともその一部は海綿動物や刺胞動物だったのではないか、と考えられるようになりました。

前述の胚化石からつながり、その一部は次のカンブリア紀に起こった動物の爆発的な多様化を経て、現生動物につながっているのではないか、という考え方です。

そして、最近ついに、エディアカラ生物群の代表的な化石の一つであるディッキンソニアから動物である証拠「バイオマーカー」が発見されました。

 

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        エディアカラ生物群想像図 (Marchan Blog)       ディッキンソニアの化石(Wikipedia)

 

また、エディアカラ紀末期には、海洋中のカルシウムの量が急増したため、大陸棚には広大な規模で分厚い石灰岩がつくられたことがわかっています。そして、リン酸塩鉱物や石灰の殼を持つ硬骨格の生物が初めて出現しました。この時期には海洋中のリンが急激に減少すします。おそらく、大陸棚の動物たちが競ってリンを使うようになったのだろうと考えられます。過激な競争と食うか食われるかの弱肉強食の厳しい時代が始まったことを意味しています。硬い外骨格の武装は動物が他の動物に食われないための鎧となったはずです。

その後、原生代末期の「バイコヌール小氷河期」(5億4000万年前)が訪れると、エディアカラ生物群が大量に絶滅しました。しかし、大量絶滅を起こした直後の時代に、カンブリア紀の動植物が爆発的に増え始めました。その中心は南中国の大地溝帯(リフト帯)であったことがわかっています。

 

エディアカラ生物群は、一部はカンブリア紀(古生代)まで生き延びていますが、多くはエディアカラ紀末、すなわち原生代末に絶滅しています。絶滅の原因はよく分かっていませんが、火山の大噴火などの地球環境変動のほか、捕食者の出現によるものではないかとする仮説が提唱されています。

 

[原生代の地球環境と生命活動(3)-3]大陸の離合集散と生物の進化

ヌーナ(ヌナ)超大陸が分裂した後、約10億年前に超大陸ロディニアが形成されました。しかし、再び分裂し始めます。

 

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超大陸の形成史(清水書院:地球と生命の誕生と進化)

 

<大陸の分裂・融合と生物の茎進化・冠進化>

大陸内部の地溝帯(リフト帯)では、放射性元素に富むHiRマグマ(Highly Radiogenicmagma)が噴出し、ロディニアを東西2つの大陸に分裂しようとしていました。

ロディニアの北東部には現在の北アメリカ大陸があり、北西部に中国やオーストラリアがありました。その間には南中国が位置していて、そこで地溝帯を形成し、のちの太平洋がつくられつつあったのです。

地溝帯の中央部にはリン酸塩の大規模鉱床が出現し、それらの地域にはエディアカラ生物群と呼ばれる、海綿などの大型化石が特徴的に出現します(次左図の赤い点)。HiRマグマの噴火による強力な放射線によって、生命は局所的な絶滅を起こしました。しかし、同時に、HiRマグマ噴火後、数年から数十年で大量の栄養塩の供給に支えられ、新しい生態系が「茎進化」として、これらの地溝帯で生まれました。

 

古生代の少し前の8億~7億年前頃までに、赤道地域を中心に形成された超大陸ロディニアは次第に分裂し始め、5個から10個くらいの小大陸に分裂しました。

分裂した小大陸は、約5億4000万年前頃までに南極点を中心に超大陸ゴンドワナとして再融合することになりますが、分裂した小大陸上で生息していた動植物は、大陸移動によってそれぞれ個別の環境にさらされ、個々の大陸上で「孤立進化」していきました。

 

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大陸分裂と生物の茎進化
(清水書院:地球と生命の誕生と進化)

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大陸衝突・融合と生物の冠進化
(清水書院:地球と生命の誕生と進化)

 

そうした大陸衝突の場では生物の交雑(遺伝子が異なる生物による繁殖)が起こりました。ゴンドワナ超大陸は5億4000万年前頃までに形成されたと考えられています。この大陸は、南極を中心にできた超大陸でしたが、超大陸を形成する過程で、様々な小大陸が衝突・融合しました。

その過程で、各大陸上で孤立進化してきた生物たちの交雑が進み、様々なバリエーションの生物へと進化しました。これを「冠進化」といいます。

 

<硬骨格生物の誕生>

大陸からの栄養塩供給は続くと、大気中の酸素濃度はさらに増していきました。大地が風化侵食を受けるとともに海洋に流入した鉄を含む鉱物によって、海洋中の二価鉄の量が増加したが、それらは酸化され再び縞状鉄鉱層として、海底に堆積していきました。

その海洋中ではリンやカルシウムの濃度が増し、それを利用した硬骨格生物が生まれ始めていました。

 

しかし、この頃の地球は、数千万年の間に極寒期(小氷河期)と極暑期を何度も繰り返していました。エディアカラ生物群が繁栄し始めた矢先の地球は、またしても極寒期へ向かっていきます。バイコヌール小氷河期の到来です。その結果、エディアカラ生物群は絶滅してしまったのです。

 


 

以上で3章にわたった「原生代の地球環境と生命活動」のお話は終了します。地球上の生命の源がどこから来たのかは別として、「全球凍結」や「大酸化イベント」などの地球環境の大きな変化が、地球独特の生命の進化を促したようですね。さらに、詳細な内容について知りたい方は、下記の資料などを参考に調べてみてください。次号からは「顕生代の地球環境と生命活動」に移ります。

 

<参考・引用資料>

◆Web

・「大気中の酸素は全球凍結イベントによってもたらされた!?」東京大学 プレスリリース 2015.03.30

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2015/13.html

・「全球凍結と生命の進化」田近英一 武田セミナー「地球と生命の共進化」(その3)2019.10.26

http://takeda-foundation.jp/seminar/pdf/2019-10-26_seminar_report.pdf

・「地球史における大気酸素濃度の変遷と生物進化」田近英一 東京大学 特別講演 Vol24.No.1,2022

https://www.jstage.jst.go.jp/article/medicalgases/24/1/24_1/_pdf

・「27億年前のご先祖様が体内にバクテリアを取り込むまで」産総研マガジン

https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/bb0030.html

・「スノーボールアース」東京大学 大学院理学研究科理学部 ホームページ 田近英一

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/newsletter/keywords/08/03.html

・「太陽系の銀河内軌道変化と地球の寒冷化」辻本拓司(国立天文台)ニュートリノ研究会 2021.01.07

https://www.lowbg.org/ugap/ws/sn2021/slides/802tsujimoto.pdf

・「エディアカラ生物群」Marchan Blog 2014.10.26

http://marchan-forest.blogspot.com/2014/10/ediacara-animal-group.html

・「地球磁場の弱化と銀河宇宙線が作る雲が深く関与し寒冷化が起こる」立命館大学 2017.01.16

https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=562

◆書籍

・「46億年の地球史」 田近英一 著 発行元:三笠書房

・「地球と生命の誕生と進化」 丸山茂徳 著 発行元:清水書院

・「地球と生命の46億年史」 丸山茂徳 著 発行元:NHK出版

・「地球生命誕生の謎」ガルゴー他 著 発行元:西村書店

・「地球・惑星・生命」日本地球惑星科学連合 編 東京大学出版会

・「生物はなぜ誕生したのか」ピーターウォード、他 河出書房新社

・「生命の起源はどこまでわかったか-深海と宇宙から迫る」高井 研 編 岩波書店

・「The Evolving Contoinents.」 Windley,BF.1995. ChichesterJohn Wiley & Sons.