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地球科学と生命の誕生・進化(10)<古生代の地球環境と生命活動(1)>

前3章は「原生代の地球環境と生命活動」についてお話をさせていただきました。その内容は、太古代のシアノバクテリアを代表とする「原始微生物の誕生」で幕を開けた地球上の生命活動は、原生代に入り、全球凍結や大酸化イベント、大陸の融合・分裂などの地球環境の大きな変化が、「多細胞生物や動物の出現」を促したことなどについてのお話でした。

今月からは、約5億4千万年前から現在までの「顕生代の地球環境と生命活動」についてお話になりますが、顕生代は下記の時代区分のように、さらに「古生代」、「中世代」、「新生代」に分かれ、またそれぞれの「紀区分」によっても地球上の生命活動や生命の形態が大きく変化しました。今回は大きな生命活動の変化があった顕生代初期・古生代の「カンブリア紀」および「オルドビス紀」について取り上げてみました。

次図は確認の意味で毎回掲載している「地質時代区分」とさらに顕生代を細分化した「代区分」と「紀区分」になります。こうした区分の境界では、生物の大量絶滅が繰り返し起こっています。

 

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地質時代区分における顕生代と古生代の位置づけ(NeoMag)

 

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顕生代の代区分と紀区分の関係(NeoMag)

 

[古生代の地球環境と生命活動(1)-1]カンブリア紀の爆発的生物多様化

約5億4000万年前から現在までの時代を「顕生代」といいます。地層から動物化石が豊常に産出するようになったため、それ以前と比較すると、地球環境や生物活動について得られる知見が劇的に増えました。特に、「古生代初期のカンブリア紀」には、大きな生物活動の変化が現れました。

カンブリアという名前は、1835年にイギリスの地質学者アダム・セジウィックが、イギリスのウェールズ地方(古代ローマ人がカンブリアと呼んでいた場所)でこの時代の地層を最初に調べたことに由来します。

 

<ゴンドワナ大陸>

「ゴンドワナ大陸」は、およそ5億4000万年前(カンブリア紀の始まり)までに南極を中心に形成されました。カンブリア紀になるとゴンドワナ大陸の分裂は加速し、大陸中央部から割れ始めました。現在のアマゾン川は、この頃にできた大地溝帯の跡ですが、途中で分裂活動が停止したため、大規模な地形的くぼみとして現在まで残っています。そこは、当時から現在に至るまで淡水域として魚類の進化場になったはずです。

ゴンドワナ大陸は現在のオーストラリアや中央アジア、アフリカ、南極、インドが合体した大陸であり、このうちの一部は後の時代に分裂することになります。

ほかにも現在のヨーロッパの一部とトルコにあたるアヴァロニア、同じくヨーロッパの一部であるパルチカという、2つの小規模な大陸と、北アメリカとヨーロッパが合わさったロレンシア、そしてシベリアが大陸として存在していました。

 

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カンブリア紀の大陸配置図(ブログ:古世界の住人)

 

そして、これらの大陸の間には、イアペタス海と呼ばれる海が存在し、その外にはパンサラッサ海が広がっています。

また、この頃は火山活動が盛んで、多くの山や陸地が出来ます(造山運動)。大陸からの河川も活発に地表を削り、海に多くの塩類(リン酸塩など)を供給していたのではないかと考えられています。また、浅い海もたくさんあったと考えられています。これは造山運動の結果かもしれませんし、あるいは海面の上昇により陸地が浸食されたのかもしれません。

いずれにせよ、河川が供給した塩類(リン酸塩など)が浅い海にたまることにより、殻などを持つ生物が誕生する土壌が形成されたのです。これが、カンブリア紀からの特徴です。

 

<カンブリア爆発>

前章で原生代末期(エディアカラ紀)には硬骨格生物が誕生したことをお話しましたが、顕生代に入ると化石がさらに豊富に産出するようになりました、その理由は、生物が有機物の柔組織に加えて、殼や骨、歯などの硬骨格を獲得したからです。これらは、主に炭饑塩、リン酸塩、シリカなどの鉱物からなります。その理由は、陸地から流れ込む川によって、硝酸を含む大量の栄養塩が海に運ばれ、豊かな海になったためです。これを「生体鉱物形成作用」あるいは「バイオミネラリゼーション」といいます。有機物は腐敗して分解されやすいのですが、鉱物はずっと保存されやすいため、地層からたくさんの化石が産出するようになったのです。

顕生代は、古生代(約5億4000万~2億5000万年前)、中生代(約2億5000万~6600万年前)、新生代(約6600万年前~現在)と分かれていますが、古生代の初め、カンブリア紀初期の地層からは「微小硬骨格化石群」という、小さいものは1ミリメートルに満たない化石(生物の体の一部)が発見されます。顕生代は、まさにこの微心硬骨格化石群の出現をもって始まるのです。そして、カンブリア紀中期になると、動物の爆発的な多様化を示す化石群が産出します。

次図は微小硬骨格化石群の一種、「ミクロディクティオン」の化石とその全身復元図になります。

 

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ミクロディクティオンの化石(Wikipedia)

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ミクロディクティオンの全身復元図(Wikipedia)

 

1909年、古生物学者のチャールズ・ウォルコット博士は、カナディアン・ロッキー山脈のバージェス山で「バージェス動物群」と呼ばれる海生動物の化石群を発見しました。カンブリア紀中期の約5億500万年前のバージェス頁岩(けつ岩)(薄く屑状に割れやすい泥岩)から多種多様な動物化石が大量に見つかったのです。動物界は、体の基本構造(ボディプラン)をもとに、海綿動物門剌胞動物門腕足動物門軟体動物門環形動物門脊索動物門節足動物門などに分類されていますが、現在見られるほとんどすべての門が、このとき突然出現したように見えるのです。

 

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多細胞生物の主要な系統関係と種々の形質の出現(高校生物・系統と分類よりNeoMagが編集)

 

この動物の爆発的な多様化を「カンブリア爆発」といいます。エビのような姿で体長が最大2メートルにも及んだアノマロカリス、古生代末に絶滅するまで大繁栄した三葉虫、5つの眼を持つオパビニア、棘がたくさん並んでいるように見えるハルキゲニア、ナメクジウオのような形をしたピカイアなど、不思議な姿をした動物種がたくさん見つかっています。

その後、バージェス動物群とほぼ同時代の動物化石である、中国の「澄江(チェンジャン)動物群」(約5億2500万~約5億2000万年前)、グリーンランドの「シリウス・パセット動物群」(約5億1800万~約5億500万年前)などが発見され、これらの動物は当時の地球上に広く分布していたらしいことが明らかになりました。

カンブリア爆発の起源について、これまでさまざまな議論がされてきました。とりわけ、捕食者の出現が淘汰圧となり多様化か促されたとする説や、地球上に初めて出現した「眼」を持つ動物が捕食・被食関係で有利になったことから淘汰圧が働いて多様化を促したという説(光スイッチ説)などが知られています。

最近では、遺伝子レベルの多様化はカンブリア紀よりもずっと以前に生じていたという推定結果も報告されています。カンブリア爆発は動物の「化石記録の多様化」というべきものなのかもしれません。

 

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各種バージェス動物群の復元想像図(楽天ブログ)

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バージェス頁岩の化石(特別展・生命大躍進より)

 

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アノマロカリスの復元想像図(フリー)

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三葉虫の復元想像図(地球と生命の誕生と進化)

 

[古生代の地球環境と生命活動(1)-2]オルドビス紀の生物多様化と絶滅

カンブリア紀の次の時代はオルドビス紀と呼ばれます。約4億8500万~約4億4500万年前までの時代です。オルドビス紀という名前の由来は、イギリスの北ウェールズにいたケルト系ブリトン人の古代部族オルドビケスに因んだものです。カンブリア紀同様、このウェールズで系統的に調査研究が行われました。

オルドビス紀は温暖な時代で、海水準が全般的に高くなっています。なんと、現代よりも100~225mも高かったと考えられており、これを上回る高さは白亜紀だけです。

 

<オルドビス紀の大陸>

この時期にはゴンドワナ大陸は南極方面へ移動していきます。中国はゴンドワナ大陸と分離しています。一方、アヴァロニア、ロレンシア、パルチカ、シベリアの4大陸は造山活動が活発になると共に、互いに接近し、イアペタス海は小さくなります。イアペタス海と各大陸のプレートの境には、ちょうど日本のような弧状列島が出来ていたと思われます。ちなみに、大陸ごとに生物が独自の進化を始めています。

 

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オルドビス紀の大陸配置図(ブログ:古世界の住人)

 

<海洋生物の爆発的多様化イベント>

この時代は、カンブリア紀に出現した海生動物がさらに爆発的に多様化した「オルドビス紀の爆発的生物多様化イベント」と呼ばれる時代として知られています。海水中の懸濁物(浮遊物質)を濾過して食べる摂食者や遠洋性の動物など古生代型の動物相が、カンブリア紀に登場した特徴的な動物相に取って代わります。オウムガイなどの軟体動物やカンブリア紀からの三葉虫などの節足動物、筆石などの半索動物、ウミユリなどの棘皮動物、床板サンゴなどの刺胞動物などが、オルドビス紀の海で大繁栄しました。この時代は、カンブリア紀よりさらに生物が多様化しており、現在、おおよその数字ですが、この時代の海洋生物は500科4500属程度が知られており、顕生代全体の12%が、この時代に生きていたことになります。

オルドビス紀後期には顎(あご)を持つ顎口類が出現しました。顎口類には、顎を持たない無顎類を除いたすべての脊椎動物、すなわち魚類や鳥類、哺乳類などが含まれます。無顎類は、カンブリア紀に出現以来、オルドビス紀に多様化して古生代を通じて繁栄していましたが、デボン紀末にほとんどが絶滅して、現在では円口類(ヤツメウナギ類とヌタウナギ類)のみが生き残っています。顎口類の出現により、オルドビス紀最後の海洋で顎を持つ魚類が繁栄への道をたどることになります。

 

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オルドビス紀の代表的な海洋生物(ブログ:古世界の住人)

 

[古生代の地球環境と生命活動(1)-3]O-S境界絶滅イベント

生物多様化によってオルドビス紀にはさまざまな動物が繁栄しましたが、約4憺4400万年前、それは突然終わりを告げました。生物の大量絶滅イベントとして知られる、「オルドビス紀-シルル紀(O-S)境界イベント」が生じたのです。

生物種の絶滅は生存競争や環境変動などによって常に生じています。それは[背景絶滅]と呼ばれています。それとは別に、あるとき数多くの生物種が同時に絶滅するということが起こります。それが[大量絶滅]イベントです。顕生代には主として海に住んでいた動物の化石がたくさん地層に残るようになりました。そうした化石記録から生物の多様性の変化を統計的に調べてみると、顕生代を通じて5回の大量絶滅イベントが生じたことが分かりました。O-S境界イベントは、その最初のイベントに相当します。

オルドビス紀末の大量絶滅は海洋生物に大きな打撃をもたらし、海洋生物全体では49%から60%の属が絶滅し、種レベルでは85%が地球上から姿を消しました。具体的には全腕足動物と外肛動物の科の三分の一が、コノドント・三葉虫・筆石の複数のグループが絶滅しました。特に影響を受けたのは腕足動物・二枚貝・棘皮動物・外肛動物・サンゴでした。

 

大量絶滅の原因はいくつか提唱されています。一つは寒冷化です。オルドビス紀の寒冷化以前では気温は比較的温暖でしたが、その寒冷化の速さと大量の海水が氷になって氷床が発達したため、海水準が低下し、そのため生息域の減少が絶滅を加速させたと考えられています。

ゴンドワナ大陸の南端、今でいうアフリカのサハラ砂漠あたりは、この時代では南極に位置していましたが、その近辺の寒さが厳しく、巨大な氷床ができてゆき、ゴンドワナ大陸のアフリカ地域、南アメリカ地域、広がってゆきました。その結果、海水準の低下により大陸棚沿いの生息環境は一掃されました。この時代に氷床が発達していた証拠もサハラ砂漠の堆積物中で発見されています。

 

氷床が融解して海水面が上昇すると再び絶滅のピークが訪れましたが、それが安定すると絶滅事変も収束を見せました。シルル紀の初期に大陸棚が長期間再び冠水したため、生命の多様性は回復し、生き残った生物群集の中で生物多様性が増加しました。

 

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オルドビス紀の寒冷化による巨大氷床(ブログ:古世界の住人)

 

なお、大量絶滅の原因については、他にも有害な金属が海に流れ込んだことが原因とする説、超新星から放たれたガンマ線がオゾン層に大穴を開け、大量の紫外線が降り注いだとする説、火山が原因とする説もありますが、個々の説の詳細は別途機会がありましたらお伝えしたいと思います。

 


 

今回は、顕生代中の古生代初期、カンブリア紀とオルドビス紀の生命の大変動を取り上げてみました。中でも「カンブリア爆発」、「オルドビスの爆発的多様化」、「O-S境界絶滅イベント」、「大陸移動の変遷」はその後の時代の生物進化に大きな影響を与えたことが分かりました。

次回は、古生代中期から後期について、生物がさらに進化・多様化していったお話となります。

 

<参考・引用資料>

◆Web

・「生命大躍進展:バージェス頁岩動物群」FASHION PRESS 2016.04.06

https://www.fashion-press.net/news/16278

・「動物の系統と分類:高校生物・進化論」池田博明

http://spider.art.coocan.jp/biology2/systematicsanimal.htm

・「生命三十六億年の歴史」動植物・古生物研究所

http://www.uraken.net/bato/paleo/index2.html

・「時代別・分布別動物図鑑:古生代」オフィシャルブログ・古世界の住人

http://paleontology.sakura.ne.jp/

・「ミクロディクティオン」フリー百科事典・ウィキペディア

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%AF%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%AA%E3%83%B3

・「グロテスクな「あだ名」」楽天ブログ:みのむし、いとあわれなり

https://plaza.rakuten.co.jp/minomusi/diary/200601040000/

・「INTERNATIONAL CHRONOSTRATIGRAPHIC CHART(国際年代層序表)」国際層序委員会 v2023/06

https://geosociety.jp/name/content0062.html

◆書籍

・「46億年の地球史」 田近英一 著 発行元:三笠書房

・「地球と生命の誕生と進化」 丸山茂徳 著 発行元:清水書院

・「地球と生命の46億年史」 丸山茂徳 著 発行元:NHK出版

・「地球生命誕生の謎」ガルゴー他 著 発行元:西村書店

・「地球・惑星・生命」日本地球惑星科学連合 編 東京大学出版会

・「生物はなぜ誕生したのか」ピーターウォード、他 河出書房新社

・「生命の起源はどこまでわかったか-深海と宇宙から迫る」高井 研 編 岩波書店

・「The Evolving Contoinents.」 Windley,BF.1995. ChichesterJohn Wiley & Sons.