希土類磁石(ネオジム(ネオジウム)磁石、サマコバ磁石)、フェライト磁石、アルニコ磁石、など磁石マグネット製品の特注製作・在庫販売

ネオジム磁石のすべて(15)<永久磁石の吸着力・吸引力>

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ネオジム磁石を代表とする永久磁石の磁束密度はテスラメーターなどを使うことにより正確に実測できますが、永久磁石が鉄板に吸着する吸着力や少し離れた場所の鉄板や他の磁石を引き付ける吸引力はどのような方法で計測したらよいのでしょうか。また、磁石の吸着力や吸引力は磁束密度や形状などとどのような関係があるのでしょうか。

 

<各種永久磁石の鉄板への吸着力>

同じ大きさの磁石なのに、ネオジム磁石に比べてフェライト磁石など他の磁石の鉄板への吸着力に大きな違いがあります。次の図で各種永久磁石の吸着力の違いを分かりやすく示しました。

 

磁石のお話-画像240001

永久磁石の種類による鉄板への吸着力の差異

 

この図を見ると、ネオジム磁石の吸着力(強さ)が群を抜いて大きいことが分かりますね。それでは磁石の吸着力の大きさを左右するのは何か?・・・この原理を少しお分かりいただければ、磁石をご選定いただく際、大いに役立つかもしれません。

ここで、NeoMagのホームページの標準品(在庫品)を検索いただきますと、例えば以下のようなデータが出ています。

 

磁石のお話-画像240002

 

ここで示している吸着力は、鉄板に吸着した磁石(磁石に吸着した鉄板)を着磁方向と垂直方向に引き離せる最小の力を意味しています。

ご覧いただけるように、Φ10mmx10の同形状のフェライト磁石とネオジム磁石では表面磁束密度の差は3倍程度なのに、吸着力は10倍ほどの大きな違いがあります。また、同じネオジム磁石同士でも高さ(厚み)が10mmと2mmでは、吸着力に4倍近い差があります。さらに、ネオジム磁石の高さ(厚み)が同じ2mmでも外径(面積)が大きくなると吸着力も大きくなります。

 

磁石のお話-画像240003

 

(1)表面磁束密度の違い

このように吸着力に違いが出る大きな要因は、表に示している“表面磁束密度の違い”によるものです。(ただし、磁石の表面磁束密度は、材質による残留磁束密度Brと形状によって変わってきます)

(2)接触面積(極面積)の違い

また、別の要因もあります。それは“磁石の接触面積(極面積)の違い”になります。上の①~③のデータは直径が同じ磁石で接触面積は同一ですので、吸着力の違いは表面磁束密度の違いのみと考えて良いのですが、直径まで変わってきますと接触面積が変わってきます。接触面積が違うと鉄板に作用する総磁束量が変ってくるため、吸着力もそれに応じて変化します。③と④では表面磁束密度はほぼ同じですが、磁石の直径(=接触面積)が④の方が大きいために吸着力も④が大きくなります。

 

ここで、一応覚えておいていただきたいことは、“吸着力は表面磁束密度の2乗および鉄板との接触面積(極面積)に比例する”ということです。詳細は次の項で説明いたします。

 

<永久磁石と鉄板の吸引力>

鉄板に吸着した磁石の力は、前項の中で、“鉄板への吸着力は表面磁束密度の2乗および鉄板との接触面積に比例する”と説明しましたが、同じように離れた磁石の吸引力も“鉄板への吸引力は空間磁束密度の2乗および鉄板に相対する磁石の面積に比例する”と考えて良いでしょう。ここで空間磁束密度とは、磁石から離れて鉄板が置かれた位置での磁束密度のことです。但し、同時に“鉄板への吸引力は距離の2乗に反比例する”という関係があり、これらの関係は以下のクーロンの法則で説明できます。

 

磁荷におけるクーロンの法則:F=m/4πμ02

 

空間磁束密度はテスラメーターで測定できますが、磁石からの距離が遠くなるほどその大きさは小さくなります。また、磁石の残留磁束密度の値や磁石の形状によっても異なってきます。したがって、吸引力の大きさも残留磁束密度、磁石形状によって異なり、距離が離れるほど弱くなります。

 

磁石のお話-画像240004

空間磁束密度と鉄板の吸引力の測定

 

例えば、20℃におけるΦ20x10mmの円柱型ネオジム磁石(Neo50)の空間磁束密度および吸引力と鉄板からの距離をグラフにしてみますと、次のようになります。なお、距離0の値が表面磁束密度および鉄板への吸着力になります。

 

磁石のお話-画像240005

 

<磁石と鉄板との間の物質の影響について>

一口で言えば、磁石に全く吸着しない物質が間に入っても、空気と同じように磁力線を通しますから前項の話がそのまま使えます。例えば、プラスチック、ガラス、ゴム、紙、木などがそうです。また、アルミニウム、30系ステンレスのように磁石に吸着しない(非磁性)金属も同様です。反対に、磁石に吸着する物質が間に入ると磁力線を遮断(吸収)しますので、鉄板に対する吸引力が低下するか全く吸引しなくなります。但し、磁性体であっても非常に薄い物質であれば、磁力線のほとんどは通過しますので、注意が必要です。ネオジム磁石は磁性金属のニッケル(めっき)で覆われていますが、10ミクロン程度の薄い膜のため磁石の性能にはあまり影響しません。

 

<磁石同士の吸着・吸引力>

着磁した1組の同形状の磁石がそれぞれN極、S極で対向している場合は、相手が鉄板の場合のおよそ2倍の空間(表面)磁束密度が得られますので、非常に強い吸引(吸着)力が生じます。同極対向の反発力については、吸引力と同様、理論的にはそれぞれの磁石の空間磁束密度に関連しますが、残念ながらモレ磁束などの種々のファクターが関連してきますので、近似計算は難しいと思われます。

 

*なお、テスラメーターや吸引力測定装置が無い場合でも、NeoMagホームページの近似計算ツールで、 ある程度の予測が可能ですので、ぜひ利用してみてください。