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ネオジム磁石のすべて(16)<永久磁石のギャップ距離と空間磁束密度>

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点磁極からのある距離の空間磁束密度は、原則として、磁荷における「クーロンの法則」に関係してきます。その法則から導き出された基本式は、磁極の強さをm、距離をrとすると、真空中(≒空気中)ではB=m/4πr2となります。この式を見ると空間磁束密度は、(1)磁極の強さに比例し、(2)距離の二乗に反比例することがわかります。ただし、点磁極とは異なり様々な形状と特定の磁化方向を持つ永久磁石では状況は異なってきます。また、何もない空間、鉄板がある空間、磁石がある空間などではそれぞれ磁束密度が異なってきます。今回は「永久磁石のギャップ距離と空間磁束密度」について、何通りかの条件下についての基本的は考え方とそれぞれの違いについて解説したいと思います。

 

<各種条件下での空間磁束密度>

次のグラフはA:磁石AからXmm離れた距離の空間磁束密度、B:磁石AからXmm離れた距離の鉄板B上の磁束密度、C:磁石AからXmm離れた距離の磁石C上の磁束密度、D:磁石Aと磁石Cの真ん中の距離の空間磁束密度について近似計算した結果です。ただし、鉄板Bは十分磁気飽和した鉄板であり、磁石Cは磁石Aと磁気特性、形状共に同等であることが条件です。また、グラフ作成の計算式は、「ネオジム磁石のすべて(14)」の角型磁石の近似式を参考にしました。

 

磁石のお話-画像250001

各種条件下でのギャップ距離と空間磁束密度

 

それでは、磁石からの「ギャップ距離」に応じて「空間磁束密度」がどのように変化するかをみてみましょう。サンプル磁石はパーミアンス係数=2の角型・長方形のN45SHネオジム磁石です。これらのデータも磁束のモレがないとした近似計算の結果となります。また、ここでは4種類の条件についての磁束密度について調べてみました。各条件は以下のようになります。

(1)「空間の任意の位置での磁束密度A」の場合、(2)「鉄板表面での磁束密度B」の場合、(3)「NS対向して磁化した同じ磁石表面上の磁束密度C」の場合、(4)「NS対向した同じ磁石の中間位置での空間磁束密度D」の場合です。

 

(1)磁石からの距離X点での磁束密度

まず、Aの場合ですが、何もない空間での磁束密度は当然ながら磁石からの距離が大きくなるにつれて低下してゆきます。X=0のA(0)は磁石の表面磁束密度を表します。測定点は角型磁石の中心軸上とします。

 

(2)磁石から距離X点での鉄板上の磁束密度

次に鉄板表面の磁束密度Bは距離ゼロからすべての距離において、相手の鉄板も磁石もない空間での磁束密度Aの2倍、B(X)=A(X)x2になります。どうしてかといいますと、鉄板はその位置での磁石の空間磁束密度と同じ磁束密度で磁化されるためです。したがって、磁石から距離Xの空間磁束密度と距離Xで磁化された鉄板B上の表面磁束密度B(0)が加算されるためだからです。

 

(3)磁石から距離X点で向かい合った磁石上の磁束密度

さらに向かい合った磁石の表面での磁束密度Cは相手磁石の表面磁束密度C(0)と自分の空間磁束密度A(X)が加算されるため、Aの場合のひとつの磁石の空間磁束密度より、またBの場合の鉄板表面の磁束密度より大きな値になります。ただし、Bの磁石と鉄板、Cの磁石と磁石は距離ゼロでは同じ磁束密度になります。この理由は、磁石が鉄板に付いた状態では鉄板も磁石に磁化されて磁石と同じ磁束密度になるからです。

 

(4)磁石から距離X点で向かい合った磁石の中間点の磁束密度

最後にNS向かい合った同じ磁石の中間点(各磁石からX/2の距離)ではどのようになるでしょうか。任意の中間点では、それぞれの磁石からのその位置での空間磁束密度を加算した大きさになりますから、D(X/2)=A(X/2)+C(X/2)、つまりAとCは同じですからA(X/2)の2倍となります。これは、B(X/2)とも同じであり、NS向かい合った同じ磁石の中間点X/2の距離の空間磁束密度は、同じ位置の鉄板上での磁束密度と同等の値となります。例えばグラフをみるとB(4)とD(8)が等しいことがわかります。言い換えますと、片方の磁石からみると、相手磁石との2分の1の距離に鉄板があることと同じことになります。

 

以上のように、ネオジム磁石を代表とする永久磁石による空間磁束密度は、基準磁石からの距離、空間における鉄板や永久磁石などの磁性体の有無、磁石の性能、磁石の形状、磁石の磁化方向などによって種々変化しますが、基本的な挙動を知っていれば、永久磁石を取り扱う際に大いに役立ちます。