希土類磁石(ネオジム(ネオジウム)磁石、サマコバ磁石)、フェライト磁石、アルニコ磁石、など磁石マグネット製品の特注製作・在庫販売

すぐ近くにあるネオジム磁石(10) <エアコンの中のネオジム磁石>

今夏の欧州は各地で熱波の発生により、ルームエアコンの争奪戦が始まっていると報道されています。

家庭用エアコンは日本では都市部で95%以上、全国平均約90%の普及率です。一戸建て・マンションとも壁掛け型のルームエアコンが一般的ですが、1世帯で複数台所有している家庭も多くなっています。

一方、欧州では普及率の平均は約20%程度で、特にドイツ、英国、オランダ、北欧では過去の気候、家の造り、電気料金、環境負荷への国民意識などによりさらに低い普及率です。しかし、近年は気候変動の影響でこれらの国々でもルームエアコン需要が急増しています。また、欧州に限らずアジア、アフリカ、南米、中東各国でも日本メーカーや韓国、中国メーカーの製品が大きく増加しています。なお、米国でも約90%の家庭がエアコンを所有していますが、大半はダクトを利用して家全体を冷暖房するセントラル空調が主流で、ルームエアコンの設備とはかなり異なっています。

このように米国を除く世界各国でのルームエアコンの普及は目覚ましく、特にその冷房機能の重要性が高まっています。そして、実はこのルームエアコンの中には永久磁石が多数使われていて、特にネオジム磁石はその心臓部の働きを担っています。今回は、家庭用エアコン(ルームエアコン)と永久磁石について詳しく調べてみました。

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<ルームエアコンの基本原理>

ルームエアコンは、冷気を作る装置ではなく、「冷媒」という熱を運ぶ物質を循環させ、「ヒートポンプ」の原理を利用して室内の熱を屋外へ移動させる装置です。

■冷媒

西暦2000年代以前の日本製品にはR22(フロンガス)が使われていましたが、オゾン層を破壊するため現在は使用されていません。現在使用されているガスの主流は、オゾン層の破壊もなく、省エネにも優れているR32(ジフルオロメタン:CH2F2になります。

■冷房時の基本原理

1.室内機(蒸発器)

熱交換器(エバポレータ)とファンを使って以下のような役割をしています。

・室内の暖かい空気をファンで吸い込みます。

・冷たい冷媒が室内の熱を吸収し、空気を冷やします。

・冷えた空気を部屋へ送り返します。

2.コンプレッサー(圧縮機)

・熱を吸収して気体になった冷媒を高温・高圧に圧縮します。

・コンプレッサーはエアコンの「心臓部」と呼ばれます。

3.室外機(凝縮器)

・高温・高圧の冷媒がファンを通して屋外の空気へ熱を放出します。

・放熱すると冷媒は液体になります。

・膨張弁(電子膨張弁・キャピラリーチューブ)

・液体冷媒の圧力を急激に下げます。

・温度も低下し、再び室内機へ送られます。

これらのサイクルを繰り返すことで、室内の熱が屋外へ運ばれ、部屋が冷えます。

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ルームエアコンの冷房時の基本原理(暖房では冷媒の動きを逆転させる)

■暖房時の基本原理

暖房では四方弁により冷媒の流れを逆転させます。

・室外機が外気から熱を吸収する蒸発器になります。

・室内機が熱を放出する凝縮器になります。

冬でも外気には熱エネルギーがあるため、それを室内へ運ぶことができます。

<ルームエアコンのモータと永久磁石>

■コンプレッサーモータ

現在のインバータエアコンでは、ほぼすべてが永久磁石同期モータ(PMSM)を採用しています。

国産機はロータ内部にネオジム磁石を埋め込んだIPM(Interior Permanent Magnet)モータが主流です。高効率、小型・軽量、低騒音、高い省エネ性能であり、このモータがエアコンで最も多くネオジム磁石を使用する箇所です。海外の普及製品ではフェライト磁石のDCモータも使っています。

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室外機にネオジム磁石のIPMモータを搭載したエアコン(ダイキン工業)

■室内機・室外機ファンモータ

どちらもブラシレスDCモータ(BLDC)が多く採用されています。高効率タイプではネオジム磁石、普及機ではフェライト磁石を使います。インナーロータ型、アウターロータ型があります。

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室内機ファン(円筒状のクロスフローファン) 室外機ファン(羽根形状のプロペラファン)

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永久磁石を使った2種類のブラシレスファンモータ比較

■電子膨張弁用モータ

エアコンの電子膨張弁(リニア膨張弁)は、冷媒を霧状に噴射して減圧する部品です。真鍮製の本体の上に、開度を微調整するステッピングモータが乗った円筒形の構造をしています。冷媒流量を細かく制御するための多極永久磁石型モータで、主にネオジムボンド磁石が使われています。

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エアコンの電子膨張弁のしくみとステッピングモータ(細部は実際と異なります)

■ルーバーモータ

エアコンのルーバー(風向きを変える板)を動かすモータには、ステッピングモータが使われていて、内部の回転子(ローター)にフェライト磁石ネオジムボンド磁石が使われています。ステータの電磁石に電気を流して磁力を変化させることで、ルーバーの角度を上下(左右)に細かく調整しています。

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エアコンのルーバー(想像図) ルーバー用ステッピングモータ例

<まとめ>

以上のように、ネオジム磁石はルームエアコンの部品として重要な役割を果たしています。近年では、ネオジム磁石を使った交流同期モータの採用が増加し、国産製品の1台あたりのネオジム磁石の使用量はおおよそ130~330gになってきました。そのため、最近のルームエアコンはますます静かな運転音になり、且つ低消費電力になってきています。

一方、世界各国で温暖化が進み、今まで必要がなかった国、地域でもエアコンの重要性が高まっていますが、普及型はまだフェライト磁石が多いようです。しかし、ネオジム磁石を組み込んだモータの高性能・省電力の優位性は大きく、今後もネオジム磁石の需要は伸びてゆくと思われます。

ただし、依然としてレアアースの資源問題も存在しますから、自動車用、精密機械用などと同様に、エアコン用のモータ技術もさらに向上させなければなりません。

“快適さを求める”から“命を守るため”という幅広いニーズに応えなければならないエアコンは、ますますその重要度を増してきています。

(参考・引用資料)

「エアコン用高効率リラクタンストルク併用希土類磁石モータとその省電力運転」ダイキン工業

「膨張弁」前川製作所 ホームページ

その他AIによる情報