希土類磁石(ネオジム(ネオジウム)磁石、サマコバ磁石)、フェライト磁石、アルニコ磁石、など磁石マグネット製品の特注製作・在庫販売

磁気特性と磁化曲線について
4.磁気特性の温度変化(熱減磁、低温減磁)
着磁済みの磁石は周囲の温度が変化すると、熱エネルギーの関係で磁気特性が変化します。
元の温度に戻ると磁気特性も同じ値に戻る変化を、可逆温度変化といい、温度が戻っても磁気特性が戻らない変化を不可逆温度変化と呼びます。
温度が起因する着磁後の減磁は一般的には不可逆温度変化によるもので、これには初期減磁に起因するものと経時変化に起因するものがあります。
図-5は温度による可逆減磁と不可逆減磁を示したもので、ネオジム磁石およびフェライト磁石の例を取り上げました。
ネオジム磁石、フェライト磁石共に温度が上昇すると可逆温度係数にしたがってJr、Brは減少します。一方、ネオジム磁石のHcj、Hcbは温度が上昇すると減少し、フェライト磁石のHcj、Hcbは温度が低下すると減少します。
可逆温度変化(可逆減磁)、不可逆温度変化(不可逆減磁)については、特にHcjの温度係数に注意する必要があります。
また、磁石形状によるパーミアンス係数も重要なファクターになりますので、事項の内容を十分理解した上で、磁石の選定、磁気回路の設計を行ってください。
磁気特性の温度変化1
(1)可逆温度変化
磁石形状によるパーミアンス係数上の動作点が20℃でa点の場合、ネオジム磁石は120℃で、フェライト磁石は-60℃でそれぞれb点に移行します。この場合、b点はまだB-H曲線の直線上にありますから、温度が20℃に戻れば、動作点はa点に戻りBは回復します。このような変化を可逆温度変化(可逆減磁)と呼びます。
(2)不可逆温度変化
初期減磁
次に動作点がa'点の場合、ネオジム磁石、フェライト磁石は120℃、-60℃でそれぞれb'点に移行します。
b'点はB-H曲線上の折れ曲りより下にあるため、温度が20℃に戻っても、動作点はa'点に戻らず、c'点に留まってしまいBは減磁します。このような減磁を初期減磁と呼び、不可逆温度変化の代表的なものです。
このような減磁の度合いは、材質、磁石特性、温度係数、形状によるパーミアンス係数などの要素により異なってきます。
前記のように、初期減磁はHcj、Hcbの低下に起因するものが多く、ネオジム磁石の高温使用、フェライト磁石の低温使用では、Hcj、Hcbが十分大きな材質を選定するか、磁化方向の高さ寸法を大きくして(パーミアンス係数を大きくして)可逆温度変化の領域で使用する必要があります。
経時変化
着磁済みの磁石は、先に述べた初期減磁のほか、やはり熱エネルギーの関係で、時間が経つにつれ徐々に磁化が劣化します。この値は一般的には小さなものですが、時間、年数が長くなれば全ての磁石に現れる傾向です。
劣化の度合は磁石の形状(パーミアンス係数)、使用温度、材質などによって変わってきます。
また、錆などのような磁石の化学変化・変質や加工によるひずみの蓄積も経時変化の要因になります。
磁石が小さいもの、薄いものはこの経時変化に注意が必要です。
しかし、最近の磁石はめっきなどの防錆技術の進歩や経時変化への各種対策の導入により、実用的にはほとんど問題にならなくなってきています。
以上のように、磁化曲線、減磁曲線(J-H曲線、B-H曲線)は色々な意味を含んでいます。
まさに磁石の実力鑑定書というべきものですが、これを活用するのはお客様である皆さんです。
最初のうちは分かりにくい面もあると思いますが、ある程度理解が進むと磁石の奥深さが段々とお分かりになってくることでしょう。磁石のパワーユーザー様には是非これらの曲線を有効に活用していただきたいと存じます。